知事は「敵視してない」と言うけれど…感染対策で部活禁止、突然「引退」迫られる

青森の県立学校での部活動の禁止を盛り込んだ県独自の新型コロナウイルス感染防止策に、教育現場で困惑が広がっている。全国大会への出場に向けた予選会の開催日程が不透明になったり、突然の「引退」を迫られたりしているためだ。生徒たちは不安を募らせている。
県の独自対策は、対外試合や合宿を含む部活動を30日まで禁じている。このため県高校野球連盟は、選抜高校野球大会につながる秋季県高校野球選手権大会の開幕日を本来の9月11日から10月に延期すると決めた。
一方、県大会の上位3チームが出場する東北大会は、10月7日から弘前市などで開催される予定だ。日程が窮屈になるため、県高野連は県大会の出場校・チーム数や会場などの見直しを始めたほか、東北大会の日程変更や県外開催も視野に東北地区高野連と協議を続けている。
ただ県大会の10月延期は、県の独自策が予定通り今月末で終了することを前提としている。感染状況は予断を許さない状況が続いており、対策期間が延長されれば、県代表チームが東北大会の出場を辞退する可能性もあるという。県高野連の担当者は「最悪のケースは何とか避けたい」と推移を見守る。
今春の選抜大会に21世紀枠で出場した八戸西高の主将(2年)は「甲子園を目指している中で目標を見失ってしまうことになる。どうにかしてでも、参加できるようにしてほしい」と願っている。
全国高校サッカー選手権県大会(県サッカー協会など主催、読売新聞社など後援)は、10月9日だった開幕日を15日に繰り下げた。今月30日に県の独自策が終わっても部活動の再開直後に試合をするとけがをするリスクが高まるとして考慮した。11月7日の決勝の日程は変更せず、平日にも試合を行うことで対応する。
部活動全面禁止の影響は、文化部にも及んでいる。
青森西高の合唱部員の3年生は突如、事実上の引退を突きつけられた。同校を含む3校は、今月24日に全日本合唱コンクール東北支部大会が開かれる山形市に行くことができない。全日本合唱連盟東北支部は、県大会の音源で審査する救済措置を設けたが、3年生からは「会場で西高らしい歌声を響かせたかった」との声が上がる。顧問の松野由美子教諭は「ホールでの審査とは音の響きが異なる。ステージで歌わせてあげたかった」と肩を落とした。
これに対し、三村知事は2日の定例記者会見で、「部活動を敵視しているわけではない」と強調。その上で、練習や試合は感染リスクが高まるとして理解を求めた。