100年前の昭和天皇の写真集見つかる 皇太子時代の欧州歴訪 富山

昭和天皇が皇太子時代の1921(大正10)年、6カ月にわたってヨーロッパ諸国を歴訪した写真を収録した「皇太子殿下御渡欧記念写真帖 第1巻」が、富山市の民家から発見された。今からちょうど100年前の出版物だが、傷みも少なく、専門家も「初めて見た」と驚く。
渡欧は、21年3月3日~9月3日の6カ月間、英、仏、ベルギー、オランダ、イタリアなどを歴訪。日本の皇太子が欧州の地を踏んだのは初めてで、当時、国内でも大きな話題を集めた。
写真集は、全10巻にわたってその模様を詳細に記録し、大阪毎日新聞社(現・毎日新聞社)が発行した。今回見つかったのは第1巻で、海軍服姿の立ち姿に始まり、高輪御殿の出発、琉球(現・沖縄県)を経て、香港到着までを撮影した白黒写真を収録。定価1円20銭と印刷されている。
前書きには、「我が社は殿下の此(こ)の御大業を弘く国民に仰がしめ、永く子孫に記念するため」刊行することにしたと記される。
特に、昭和天皇が沖縄を訪れたのはこの時が最後で、那覇市内や首里城内を人力車に乗って通行する貴重な姿も収録されている。
この写真集を保管していたのは、富山市婦中町広田の宮本あつ子さん(71)。73年に52歳で他界した父武雄さんの遺品で、今年、家の改築に伴って遺品を整理したところ、本棚から見つかった。
武雄さんはこの写真集が刊行された21年に生まれ、その後開拓団の一員として満州(現中国東北部)に渡り、敗戦後はシベリアに抑留。48年に富山へ引き揚げた後は近くの小学校の用務員などをしており、あつ子さんは「その時にもらったものでは」と推測する。
あつ子さん自身も70歳を過ぎ、父の遺品の整理を決めたといい「父が生きていたら100歳。大切に保管していたものなので、何かの役に立てば父も喜ぶでしょう」と話す。
富山市郷土博物館(同市本丸)の坂森幹浩館長も初めて見たといい、「当時は皇太子が欧州に行くこと自体驚くべきことで、国民の一大関心事だったことがよく分かる。また未来の天皇のお姿を見たいという国民が多かったろうし、高い関心に応えるツールだったのだろう」と写真集の意義について語っている。【青山郁子】