中国人技能実習生に虚偽の住民異動届を提出させたとして奈良県警天理署に逮捕された中国籍の男が、実習生ら51人に対し、偽って登録した住所で原付きバイクの運転免許を取得させた上で、免許証を買い取っていたことがわかった。男は手に入れた免許証でクレジットカードを取得しており、「スマートフォンを購入し、転売で稼ぐためだった」と供述している。同署は、計画的に犯行を繰り返していたとみて、経緯を調べている。(岡本与志紀)
男は、中国籍で住居不詳、無職張志剛被告(37)(電磁的公正証書原本不実記録・同供用罪などで起訴)。
発表では、張被告は2020年1月~21年2月、奈良県内などの中国人技能実習生7人と共謀、大阪市西成区に住所を移したとする虚偽の住民異動届を在留カードと一緒に区役所に提出した疑い。2月、県内の実習生受け入れ機関から「在留カードが県外の住所になっている」と通報があり発覚した。
逮捕後の調べで、7人は虚偽の住所が記載された在留カードと住民票を使って大阪府内で原付き免許の試験を受け、合格後、張被告に免許証を譲渡していたことが判明。張被告は対価として、十数万円やスマホを渡したこともわかった。
逮捕された実習生は「免許証は生活に必要なかった。簡単に稼げる話があると聞き、バイト感覚でやった」と話しているという。
原付き免許は、学科試験などに合格すれば1日で取得できる。同署によると、張被告は、中国語で書かれた試験対策プリントを実習生に渡し、試験に付き添うこともあった。合格できるノウハウのある大阪府で試験を受けさせるため、西成区に住所を移転させたとみられている。
同署が張被告の関係先を捜索したところ、中国人技能実習生ら51人分の免許証が見つかった。古いものでは18年に取得されており、実際の居住地が岐阜県や愛知県のものもあった。張被告は、同様の手口で長期にわたり広範囲から実習生らを集め、免許証の買い取りを繰り返していたとみられる。
また、免許証と同じ名義のクレジットカードなど約300点も見つかった。張被告はカードと免許証を使い、スマホを分割払いで購入した後、途中で支払いを打ち切り、スマホはリサイクルショップなどに転売して利益を得ていたといい、「数百万円を稼いだ」と供述しているという。
外国人がクレジットカードを作ったりローン契約を結んだりする際の審査では、免許証があると有利とされ、捜査関係者は「犯行には免許証が欠かせなかったのではないか」とみる。
51人の多くはすでに帰国しているといい、天理署は「事件の全容解明は難しいが、中国人のかかわる闇ビジネスの一端を暴くことができた」としている。