「熱海盛り土流出事故」捜査に新展開、新たに6人の遺族が刑事告訴 殺人容疑で不動産元幹部の立件は可能か

静岡県熱海市で7月に発生した大規模土石流をめぐる捜査に新展開だ。起点となった土地の安全管理を怠ったとして、遺族が土地の現旧所有者を業務上過失致死などの容疑で刑事告訴し、受理されたが、新たに6人の遺族が刑事告訴し、2011年まで土地を所有していた不動産管理会社(清算)の元幹部については殺人容疑を適用する方針だ。殺人での立件は可能なのか。
土石流は7月3日に発生し、熱海市伊豆山地区の周辺住民ら26人が死亡した。母親(77)を亡くした瀬下雄史さん(53)は土石流の起点となった盛り土の安全管理を怠ったとして、土地の現旧所有者を業務上過失致死などの疑いで静岡県警熱海署に刑事告訴、8月27日に受理された。
両者を相手に起こす予定の損害賠償請求訴訟は原告が60人前後に上り、早ければ今月28日に静岡地裁沼津支部に提起するという。
新たに6人の遺族が両者を刑事告訴する方針で、前所有者には殺人容疑を適用するという。
静岡県によると、土石流の起点となった土地を06年に取得した前所有者は、盛り土に産業廃棄物を混ぜるなどの不適切行為を繰り返し、県と市から複数回にわたって行政指導を受けていた。
遺族らでつくる「熱海市盛り土流出事故被害者の会」弁護団長の加藤博太郎弁護士は、前所有者には届け出以上の量の盛り土をしていた疑いがあるとして「行政の指摘を無視したうえ、届け出以上の盛り土には産業廃棄物も含まれていた。土石流が発生するリスクは当然予想できたもので、周辺住民が死んでもかまわないという『未必の故意』があったといえるのではないか」と殺人容疑適用の理由を語った。
殺人容疑での立件は可能なのか。弁護士の高橋裕樹氏は「殺人罪を成立させる実行行為が焦点となる。例えば、包丁を心臓めがけて指すような行為が実行行為にあたるが、今回の土石流では盛り土することが実行行為にあたるのか、判断が難しい。未必の故意についても認定のハードルは高いのではないか」と指摘した。