水に流せぬ公務員のお粗末 栓なきプール1週間給水

気の緩みがバルブの緩みを招いたのだろうか。大阪市立小学校で8月、プールの排水弁が開いたまま1週間も給水し続けるミスが発生した。待てど満水にならず、教員らが気づいたときには後の祭り。市教育委員会が無駄になった水量や水道料金を計算中だ。同様のミスは各地で繰り返されており、兵庫県では県職員に約300万円の補(ほてん)を求めたケースもあった。今回は果たして-。
一向に満水にならず
「プール清掃後に排水弁を閉めないまま給水したことで、水を排水し続けてしまった」。大阪市教委は今月8日、市立弁天小学校で起きたミスを発表した。
市教委によると、2学期の始業式を翌日に控えた8月24日、清掃業者がプールの掃除を行い、同校の教員が夕方に給水を始めた。少したって教頭が水がたまり始めているのを確認したという。
半日程度で満水になるはずだったが、翌25日以降も水位は低いまま。昨年も改修工事の影響で一時的に水がたまりにくい状況があったといい、教員らは31日まで様子見を続けた。
9月1日朝、ようやく詳しく確認したところ、給水前に閉めるはずだった排水弁が開いた状態になっていたことが判明。排水弁には「開」や「閉」といった表示はなく、市教委は各校に排水弁の閉め忘れがないよう、複数人で確認するよう注意喚起していた。同校では、プールの管理は教員が輪番で担っている。1学期には授業のため2回給水したが、今回のようなミスはなかったという。
600万円の損害も
市教委の担当者が言うように「あってはならないミス」だが、同様の事案は各地の学校や公共施設で発生している。
広島県海田町の小学校では7月、プールの排水弁の操作を誤り、10日間にわたって給水を続けた結果、約80万円の損害が出た。8月には高知市内の小学校でも同じようなミスがあり、下水道の処理代として約270万円かかった。こうした損害は自治体がまかなうことが多いが、その原資は当然、住民らの税金だ。
一方で損害の補を職員個人に求めたケースもあった。兵庫県では令和元年10月、県庁の貯水槽の排水弁を開けたまま約1カ月間も給水し、約600万円の損害が発生。県は「職員の責任は重い」として、過去の裁判例などをもとに職員に約300万円を請求し納入されたという。
今回の大阪市立小学校の場合、損害はどれほどになるのか。プールは小学校で一般的に使用されている大きさで、縦25メートル、横12・5メートル、深さは0・9~1・2メートル。プールを満水にするのに必要な水量は、少なく見積もっても281立方メートルとなる。半日で満水になるとすれば1週間で14杯分、計3934立方メートルになる計算だ。
市教委は水量や水道料金を計算中としているが、市の水道代は千立方メートルを超えると1立方メートル当たり358円になるといい、単純に掛け合わせると損害額は約140万円にも上る。市教委の担当者は「税金の無駄遣いであり、申し訳ないが市で負担することになるのではないか」と説明する。
コスト明示で再発防止を
人的ミス(ヒューマンエラー)に詳しい千葉大の一川誠教授(心理学)は「人間は現状がうまくいっていると認識したいものだ。問題が起きていることに気づくきっかけがなければ、大抵のことはそのまま通り過ぎていく」と指摘する。
厚生労働省が示す人的ミスの分類によると、市立小学校のミスは「ついつい・うっかり型」のうち、方法や手順を間違える「行動エラー」に該当するようだ。
一川教授は、プールの給水ミスは水使用量の急変を自動で知らせるシステムなどがあれば、短時間で気付くことができた可能性があるとする。また、同じミスを繰り返さないためには、無駄になった水道料金のような「失敗のコスト」を明示することも有効な手法だという。
「人間は失敗するものと捉え、その失敗から教訓を学んでいくしかない」と一川教授。一市民の立場からすれば、公務員のお粗末なミスを何度も水に流すわけにはいかない。再発防止を肝に銘じ、気持ちもバルブもしっかり締め直してほしいところだ。(小泉一敏)