佐賀県鳥栖市で79歳の女性を殺害したとして長崎大薬学部4年の山口鴻志(こうし)容疑者(25)が殺人容疑で逮捕された事件で、土地勘のない場所で面識のない女性を突然襲うなど山口容疑者の行動に不可解な点が多いとして、捜査当局が精神鑑定の実施を検討していることが、捜査関係者への取材で判明した。刑事責任能力の有無を調べ、起訴の可否を判断するためとみられる。
山口容疑者は、10日午後1時ごろ、鳥栖市酒井東町の民家敷地内で、大塚千種(ちぐさ)さん(79)の頭を鈍器で複数回殴打し殺害したとして14日に逮捕された。
捜査関係者によると、山口容疑者は9日に自宅マンションがある長崎市から電車で福岡市に移動。10日に福岡市からタクシーで鳥栖市に向かい、鳥栖市役所付近で降車して徒歩で現場にたどり着いたとみられる。事件後、福岡市に戻って宿泊。電車などで大分市に移動し、13日に大分県警大分中央署に自首した。
山口容疑者は、自首した際「女性の頭をハンマーで複数回殴った。僕が殴った女性は死んだかもしれないので、とんでもないことをしてしまった」と供述する一方「確定的な殺意はなかった」と述べていた。
これまでの調べで、山口容疑者と大塚さんに面識はなく、山口容疑者は福岡市で中古のハンマーを購入したうえで「殺せる人を探した」という趣旨の供述をしている。鳥栖市を訪れたのは初めてで、民家敷地内で除草作業をしていた大塚さんにハンマーで突発的に殴りかかったことは認めており、捜査当局は、通り魔的で凶悪な事件態様の重大性も踏まえ、鑑定留置実施を検討しているとみられる。【井土映美、高橋広之】