飲酒運転を減らすため、滋賀県警は、地図上に様々な情報を表示できる「地理情報システム(GIS)」を活用して取り締まりを強化している。検問や事故で摘発した飲酒ドライバーから走行ルートを聞き取って地図に落とし込み、検問逃れで利用される「抜け道」を割り出すなど、効率的な摘発を進めている。(松山春香)
県警交通部の警察官が使うパソコンの地図には、道交法違反(酒気帯び運転)などで摘発した飲酒ドライバーの運転ルートが赤色で示されている。大津、草津両市間を結ぶ県道や近江大橋など幹線道路だけでなく、幅が狭い生活道路も赤色に。摘発が多いエリアほど濃い赤で着色される。摘発事案を時間帯別で検索することもでき、取り締まりのポイントを素早く把握できる仕組みだ。
県警がこの取り組みを始めたのは昨年1月。事故や検問で摘発した全てのドライバーから、▽飲酒場所▽運転の開始地点▽検挙した場所▽目的地――を聴取。摘発日時などのデータとともに交通違反の情報を管理するシステムに入力し、これまで事故分析のために活用していたGISと連携させて地図上に落としている。
これにより、従来は警察官が経験などをベースに選んでいた検問場所を、データに基づいて決めることが可能になった。また、検問を積極的に実施していなかった狭い生活道路が、検問逃れの「抜け道」となっていたことも判明した。
県警交通指導課の太田隆之課長補佐は「データに基づいて新しく選んだ検問場所では、飲酒運転の摘発が多くなったとの報告が上がっている」と語る。
さらに、事故や検問の記録をデータベース化したことで、飲酒ドライバーの行動の傾向もわかってきた。今年1~8月で飲酒場所として最も多かったのは、飲食店の50件(前年同期比1件減)で、次いで自宅の48件(同11件増)など。自宅での飲酒後に酒を買い足すため再び車で店に向かったり、コンビニ店で購入した酒を駐車場で飲んで運転したりする例もあった。
今年6月に千葉県
八街
(やちまた)市で下校中の小学生5人が飲酒運転とみられるトラックにはねられ死傷した事故を受け、滋賀県警は今後、夜間だけでなく昼間の検問も強化する方針だ。
寺堀清・交通部長は「飲酒ドライバーの大半が『自分は酔っていない。事故を起こさなければ大丈夫』と言う。悲惨な事故につながる飲酒運転を、データを基にした取り締まりの強化で撲滅させたい」と話す。