日産自動車前会長カルロス・ゴーン被告(67)の役員報酬を過少に記載したとして、金融商品取引法違反に問われた日産元代表取締役グレッグ・ケリー被告(65)と法人としての日産の公判が29日、東京地裁(下津健司裁判長)であった。検察側は論告で「高額報酬を手放さずに開示も避けるという、ゴーン被告の私欲の実現を徹底して追求した」と述べ、ケリー被告に懲役2年、日産に罰金2億円を求刑した。弁護側の最終弁論は10月27日に行われる。
起訴状では、ケリー被告はゴーン被告と共謀し、2018年3月期まで8年分のゴーン被告の役員報酬が計約170億円だったにもかかわらず、有価証券報告書には計約91億円少なく記載したとしている。
ケリー被告側はこれまでの公判で「未払い報酬は存在せず、支払いを予定していたのはゴーン被告の退職後の『顧問料』などだった」として無罪を主張。19年末に海外逃亡したゴーン被告も捜査段階で否認していた。一方、日産側は起訴事実を認めている。
論告では、金額を1円単位で計算した覚書など多数の証拠を挙げた上で、ケリー被告が役員報酬の一部を「未払い分」と扱うことで開示を避けつつ、後払いする方法を構築したと指摘。東京地検特捜部と日本版「司法取引」(協議・合意制度)に応じ、公判でもこうした「報酬隠し」を説明した大沼敏明・元秘書室長(62)ら2人の証言は信用性が高いとし、「ゴーン被告とケリー被告の弁解は信用に値しない」と述べた。
その上で、米国の弁護士資格を持つケリー被告について、「ゴーン被告の絶対的な信頼と法律の専門知識を併せ持ち、犯行の準備段階から主体的に関与を続け、『裏報酬』をあたかも正当に見せかけた」と主張。日産に対しても、「わが国有数のグローバル企業でありながら、ゴーン被告を恐れる経営陣らが企業統治の機能不全を引き起こし、犯行を助長した」と指摘した。