秋篠宮家長女・眞子さま(29)と小室圭さん(29)の結婚をめぐるワイドショーのひどさはこれまで指摘してきたが、今回は最も悪質な「バイキングMORE」(フジテレビ系)について扱う。
29日の放送で、皇室ジャーナリスト・近重幸哉氏の話として「秋篠宮さまは小室さんとお会いしない可能性が高い」との情報を紹介しているが、推測と事実を混同している。
この情報のテロップを見た司会の坂上忍氏が「これすごいことですよね。ちょっと」と述べた後、近重氏は次のように続けた。
「今の状態だとですね、『高い』とは言い切れないんですけども、会わない可能性もおありなんじゃないかと思うんですよね。ですから、小室さんが秋篠宮殿下の願われたことを3年半にわたって、成し遂げられないっていうのがですね。そこは、秋篠宮殿下の中には、お心としては強く残られている」
そもそも「可能性が高いのか」「可能性もある」のか、推測のレベルが曖昧である。その上で、まるで秋篠宮さまが、今もわだかまりを強く感じていることが確実なような言い回しである。これも、近重氏の推察ではないだろうか。推測と事実は明確に区別して話すべきだ。
■推測情報を事実として議論している
小室さんと眞子さまの結婚を、秋篠宮さまが認められていないと信じたい一部のネット民の間で、こうした確度が全く不明な情報が「事実」として拡散されていく。推察と事実を混同させるような報道の仕方は、虚偽報道やフェイクニュースと批判されかねない手法である。
秋篠宮ご夫妻と小室さんが会わない事態はあり得ない。
これは、宮内庁を取材する者、常々ウォッチしている者にとっては常識に属する話だ。昨年11月の秋篠宮さまの「結婚を認める」発言、今年4月のいわゆる「小室文書」発表後の長官および皇嗣職大夫の発言を見れば、すでに秋篠宮ご夫妻は結婚を容認し、眞子さまのニューヨーク行きをサポートしていくことがわかる。
近重氏は、秋篠宮さまと小室さんが会えるとしたら、「会見までの間に(小室さんが)なんらかの対応をされて、秋篠宮殿下がそれをお認めになったら」と付け加える。秋篠宮さまは4月の「小室文書」の説明を理解したからこそ、本日1日に結婚が発表されるのである。
秋篠宮さまは納采の儀などは行わないと言ったものの、結婚は認めている。眞子さまを無一文でニューヨークに放り出すわけがない。「駆け落ち婚」でも、「追放婚」でもない。
小室さんのご挨拶は、近重氏の言うような条件付きではまったくない。
あるいは、フジテレビの宮内庁担当記者だけが「秋篠宮さま、小室さんとお会いしないご意向」という情報をキャッチして、「バイキング」はそれをもとにした番組を作ったのだろうか。それならば、ワイドショーではなく、ぜひストレートニュースとして報道していただきたい。
「バイキング」は、推察のレベルが曖昧な近重氏の情報を、ほとんど事実のように議論を進めていく。
■小室さん直撃はパパラッチ行為とは別のものなのか
さらに、「ロン毛で帰ってきた時点で(秋篠宮さまと)会わないんだなと思ったのよ」、「(小室さんの)ちょんまげは、ニューヨークでサムライパークみたいの作って、ひと稼ぎするんじゃないか」など、お笑いグループ「おぎやはぎ」の2人による揶揄を含めたトークが展開されるのである。「両親にご挨拶もできない」小室さんを、〈人としてどうか〉などと見下す趣旨である。
海外で新しいキャリアを始めようとする前途ある若者を笑いものにする「いじり」は悪質であり、いじめに近い。
ついでながら、小室さんの髪型について近重氏は同日朝のTBS系「あさチャン」で、記者会見までに小室さんが髪を切るかどうかがポイントと指摘したうえで、「このままの髪型で記者会見に臨むと、『僕はニューヨーカーとして生きて行くから、皇室のことは気遣わないよ』との印象が国民に広まる」と述べている。「ジャーナリスト」を名乗るのであれば、見た目で人間を理解することがどのような重大な差別なのかは理解していただきたい。
「バイキング」はさらにニューヨークでの生活についても、「パパラッチは、単に普通に歩いているというような、道を歩くというような写真から、お買い物をしてるなら何を買ったなどという、まさかのような写真も撮る」とする、ジャーナリストの多賀幹子さんのコメントを紹介した。小室さんの帰国直前、PCR検査をした小室さんが路上を歩いているところを最初に撮影した(パパラッチした)のは、フジテレビではなかったか。
スタジオの議論は、米国のパパラッチが撮影した映像を日本のメディアが買うかどうかとへと続き、近重氏は「買うんじゃないですかね、メディアによっては」などと述べている。
放送は、小室さんと眞子さまのニューヨークでの生活の「新たなる心配」はパパラッチであり、対策のために必要な警備の費用が莫大であることを紹介した。しかし、私にとって、最も心配な「パパラッチ」は、執拗に小室さんへの揶揄を続け、世論を歪ませる一因となっている「バイキング」である。
▽森暢平(もり・ようへい) 成城大学文芸学部教授。元毎日新聞記者。著書に『天皇家の財布』(新潮社)、『近代皇室の社会史』(吉川弘文館)、『皇后四代の歴史──昭憲皇太后から美智子皇后まで』(吉川弘文館、共著)、『「地域」から見える天皇制』(吉田書店、共著)などがある。