岸田文雄内閣が4日に発足し、日本の針路を左右する衆院選の日程が19日公示、31日投開票で固まった。新型コロナウイルス感染拡大によって影響を受け、厳しい局面に身を置いてきた人たちに新政権や政治に望むことを聞いた。
「サービス業に勤めていたが、コロナの影響で会社の経営が厳しくなって度々部署を変えられた。とうとう数日前、退職した」。福岡市中央区の「ハローワーク福岡中央」前で求人票を眺めていた同市博多区の男性(48)は声を落とした。生活は楽ではなく、再就職を急いでいるがサービス業はどこも苦しい。「コロナで経済は大きな影響を受けた。新政権はとにかく景気をよくしてほしい」
総務省統計局の労働力調査によると、2020年7~9月期まで2%台後半で推移していた九州・沖縄の完全失業率はコロナ感染が広がり始めた同年10~12月期以降、3%台に上がり、先行きも不透明だ。
コロナ禍による経済不安は人々の暮らしに影を落としている。福岡市城南区で年金生活を送りながら大学生の息子に学費を送っている60代の女性は、先行きの不安から職探しを始めたがなかなか見つからない。「新政権は安倍(晋三元首相)さんたちにそんたくした顔ぶれで、国民の声が反映されるのか疑問。あまり期待していない」と話した。【山口桂子】
「命を守る政権か、本気度を見たい」
菅義偉内閣は新型コロナウイルスの感染「第5波」を食い止められなかった。患者の治療にあたる医療従事者らは「新政権は専門家の意見を重視した政策をしてほしい」と求める。
「安倍・菅政権は感染終息の見通しがないまま東京五輪・パラリンピックの開催に突き進んだ。目先の経済などを優先したとしか思えない。岸田さんも両政権を支えていた人だ」。福岡市西区の「新室見診療所」で発熱患者らを診察してきた熊谷芳夫医師(70)は冷ややかな口調で話した。
「コロナは医者から見ても未知の病気で、知らない間に感染する。学校や保育所など感染拡大が心配される施設では、公費でPCR検査をしていち早く陽性者を発見するなど対策が必要だ」と抜本策を求める。
コロナの1日の感染者数が全国最多になる日も多かった大阪。大阪府守口市の診療所「北原医院」の井上美佐院長(60)は「小さなガーゼ製のアベノマスクを配ったり、緊急事態宣言中に五輪を開催したり。専門家の意見を聞いていないのではと思うことが度々あった。国民の命を守る気がある政権かどうか、本気度を見たい」と話す。
観光地からも切実な声が上がる。長崎市の大浦天主堂の近くで土産物店兼レストラン「マリア館」を営む松永博行さんは9月末まで休業し、10月に入って再開したばかり。「この1年間でまともに店を開けられたのは計1カ月ぐらい。早く修学旅行生が戻ってほしい」と願う。
長崎市は例年のこの時期「長崎くんち」でにぎわうが、コロナの影響で2年続けて中止に。勤めていた老舗旅館が9月に廃業して職を失った60代女性は「コロナで失業した人の生活や職探しなどをサポートしてほしい」と語った。【蓬田正志、桐野耕一、中山敦貴】