介護保険料などの払い戻しを装い、高齢者らを現金自動預け払い機(ATM)に誘導する「還付金詐欺」の被害が京都府内で増加している。8月末時点で21件と、昨年1年間の認知件数4件を大幅に上回った。どんな手口なのか。直前で被害を免れた京都市西京区の女性(66)が取材に応じ、「まさか自分がだまされるとは思っていなかった」などと心境を語った。(浅野榛菜)
「西京区役所の職員ですけど、3万5000円の還付金があります」
6月17日午前、女性の自宅に男から電話がかかってきた。若くて落ちついた声で「本日中に振り込みます」「郵便局に行って、電話をかけてください」と急がせた。女性にはこれまでにも還付金があったが、以前は封書による連絡だった。女性は不審の念も抱いたが、「手続きの方法が変わったのかな」とあまり気にすることはなかった。
近くの洛西郵便局(西京区)に到着後、男の指示通りに電話をかけると、「ATMの方に行ってください」と言われ、通話をしながらATMの前に移動した。その様子を不審に思った局員が「代わりにやりましょうか」と声をかけた。局員が電話を代わると、いきなり電話を切られた。その時、初めて詐欺だと気づいたという。
女性は「何百万円だったらそんなはずはないと言えるが、3万5000円ならあり得るかもしれないと思ってしまった。心の弱みにつけ込まれてしまった」。ニュースなどで詐欺について知っていたつもりだったが、「どこか人ごとのように思っていたかもしれない。誰にでも起こる可能性があると伝えたい」と訴える。
洛西郵便局では、そのわずか6日前にも、同様の行動をとっていた高齢女性に声をかけ、被害を防いでいる。その後、電話をしながら集中してATMを操作する高齢者に気付いてもらう手段として、「大丈夫ですか?」「詐欺ではないですか?」と書かれた短冊形のカードを作成。不審な場面を見かけたらすぐに差し出せるよう、常にポケットに入れるようにした。同局は「今後もおかしいと思ったら積極的に声をかけ、被害を防いでいきたい」と話す。
府内の今年1~8月末の特殊詐欺の件数は117件で前年同期より13件減ったが、被害額は約2540万円増の約1億9670万円。このうち還付金詐欺の被害額は約1680万円で、昨年1年間の約220万円をすでに大きく上回っている。
府警によると、還付金詐欺の年間認知件数は2018年から10件未満で推移していたが、今年に入って増加。70歳以上はATMを一定期間利用しないとATMからの振り込みができなくなるなど利用を制限されることもあるため、被害者は60歳代後半が目立ち、21件のうち18件が65~69歳だったという。
還付金詐欺が増えている原因について、府警は「1回でだまし取れる金額は低いが、受け子を必要としないなどリスクが低いことが大きな要因の一つではないか」と分析する。
こうした状況を受け、府警も対策を強化。狙われやすい年代や詐欺の手口を記したチラシを作成して各署に配布したほか、高齢者家庭が防犯機能付き電話を購入する際に、最大2000円の補助を受けられる制度を7月から本格的に導入するなどしている。
「『ATM』『還付金』という言葉が電話で出たら、それは間違いなく詐欺」と府警の担当者。「その際は電話をいったん切り、周囲に確認するようにしてほしい」と注意を呼びかけている。