スリランカ人強制送還 「違憲」確定へ 国が上告見送り方針

スリランカ人男性2人を難民と認められないと告げた翌日に強制送還した入管の対応は、「裁判を受ける権利」を保障した憲法32条に違反すると判断した9月22日の東京高裁判決について、国側は上告を見送る方針を固めた。上告しても判断を覆すのは困難との結論に至ったとみられる。上告期限の6日を過ぎれば国の逆転敗訴が確定する。
東京高裁判決によると、2人は短期滞在の在留資格が切れて不法残留となった。難民認定申請をしたが認められず、異議の申し立ても2014年10~11月にそれぞれ棄却された。2人は申し立てが棄却されれば不認定処分の取り消しを求めて訴訟を起こす意向だったが、入管は棄却の事実を約40日間、2人に伝えず、告知した翌日に国のチャーター機でスリランカに集団送還した。
判決は「集団送還を確実かつ円滑に実施するため、意図的に棄却の事実の告知を送還直前まで遅らせた。裁判を受ける権利を実質的に奪った」と指摘。請求を棄却した1審・東京地裁判決を変更し、国に60万円の賠償を命じた。
同様にチャーター機で送還された南アジア出身の男性が起こした同種の訴訟でも、名古屋高裁が21年1月、「入管職員は、職務上尽くすべき注意義務に違反した」として国に44万円の賠償を命じ、国は上告を断念。出入国在留管理庁は6月に送還の手続きの運用を見直した。裁判を受ける権利を保障するため、送還は、難民とは認められないと告知してから2カ月以上の期間を設け、送還の予定がある場合は時期を伝えるよう各入管に通達していた。
こうした対応を踏まえ、政府内では東京高裁判決についても「受け入れざるを得ない」との意見が大勢を占めたという。
現在の入管法上、外国人が難民不認定処分を争う訴訟を起こすと、在留資格がなくても送還は停止される。入管関係者によると、日本に残るために訴訟を繰り返す外国人が多いことが長期収容の原因になっているとの認識から、告知した直後に送還して訴訟の手続きに移らせない「送還ありき」の手法が一部の入管で行われていたという。
入管庁幹部は「不服申し立ての結果を速やかに本人に告知するのは当然。長期収容を避けるために知恵を絞ったつもりだったのだろうが、間違った対応だった」と不手際を認めている。【遠山和宏、山本将克】