取引先から「酒のにおいがする」と連絡、上司の注意聞き流し運転続ける…八街児童5人死傷

千葉県

八街
(やちまた)市で6月、下校中の児童5人がトラックにはねられ死傷した事故で、自動車運転死傷行為処罰法違反(危険運転致死傷)に問われた同市、元運転手梅沢


(ひろし)被告(60)の初公判が6日、千葉地裁(金子大作裁判長)であった。梅沢被告は起訴事実を認めた。
起訴状によると、梅沢被告は6月28日午後、千葉市花見川区の京葉道路幕張パーキングエリアに停車したトラックの中で酒を飲み、約30分後、八街市内の市道を時速約56キロで走行。酒の影響で居眠り状態に陥り、道路左側の電柱に衝突した後、児童の列に突っ込んで小学2、3年の男児2人を死亡させ、3人に大けがを負わせたとされる。
梅沢被告は紺色のシャツ、黒っぽい色のジャケットを着て出廷。罪状認否で、金子裁判長から「間違いないか」と聞かれると、「(間違い)ないと思います」と述べた。
検察側は冒頭陳述で、勤務先の運送会社に昨年、取引先から「梅沢被告が飲酒運転をしている」という連絡が入り、会社が注意していたことを明らかにした。しかし、梅沢被告は聞き流し、運転を続けていたという。
事故当日は東京都内から戻る途中、同県市川市内のコンビニ店でカップ入り焼酎を購入し、昼食時に飲み干したと説明。事故現場の少なくとも120メートル手前で仮睡状態に陥っていたと主張した。逮捕後、呼気1リットルあたり0・15ミリ・グラム以上のアルコールが検出された。
証拠調べで、検察側は取引先の調書を読み上げた。梅沢被告とは月4回程度会っており、4、5年前から酒のにおいがするようになった。昨年夏には、梅沢被告の上司に「酒のにおいがするが、大丈夫か」と電話で相談していたという。
事故を巡っては、千葉地検が7月、被告立ち会いのもと行われた現場検証の結果などを踏まえ、アルコールの影響で「正常な運転に支障が生じるおそれがある」と認識しながら運転したとして、自動車運転死傷行為処罰法3条(法定刑の上限・懲役15年)の危険運転致死傷罪で起訴した。3条は、過失運転致死傷罪(同・懲役7年)よりも罰則が重い。
第2回公判は11月15日で、被告人質問と証人尋問が予定されている。

公判の一般傍聴券(27人)の抽選は6日午前8時15分から始まった。10倍を超える284人が列を作り、関心の高さをうかがわせた。
列に並んだ千葉県市原市の女性保育士(51)は「事故で何があったのかを知り、子供を守るためにできることを考えたい」と話した。
同県四街道市の女性会社員(58)は、有給休暇を取って駆け付けた。「(被害に遭った)子供たちに対して、被告がどんな気持ちでいるのかを知りたい。自分も車を運転するので、裁判を通して改めて考える機会にしたい」と述べた。

事故現場の市道(幅約7メートル)は見通しの良い直線で、ドライバーの抜け道になっていた。近くの小、中学校のPTAが2008~11年度、歩道やガードレール、路面標識の設置などの安全対策を市に求め、「事故が起こってからでは遅い」と繰り返し訴えていた。
ただ、11年度までに実現したのは街灯の設置など一部だった。用地買収の難しさなどから、歩道やガードレールは設けられなかった。市幹部は事故後、「予算が限られ、できることとできないことがある。取捨選択せざるを得なかった」と説明した。
事故を受け、政府は全国の小学校の通学路の総点検と緊急対策に乗り出した。事故現場は、車道と路肩を仕切る線が引かれ、最高時速は60キロから30キロに規制された。速度を抑えるために路面を隆起させる「ハンプ」や幅員を狭める「狭さく」も整備された。