首都圏を最大震度5強の揺れが襲った7日深夜の地震で、駅には帰宅困難者があふれ、東日本大震災を教訓に開設された一時滞在施設で夜を明かした人もいた。鉄道の遅れは8日も続き、入場規制された駅の前には通勤や通学に向かう人の長蛇の列ができた。
「就職活動で千葉県に行きたいが、間に合わない。企業には遅れると電話したが、どんな対応になるのだろうか」。JR横浜駅で、横浜市の大学生(21)は肩を落とした。
横浜駅は東京方面に向かうJR線が激しく混み、駅への入場者数が制限された。JR線から京急線に振り替え輸送が行われたが、京急線も入場が規制された。
地震で全線を一斉に緊急停止し、東京都足立区を走行中の列車が脱輪した日暮里・
舎人
(とねり)ライナー。軌道上をゴムタイヤの車輪が走る「新交通システム」で、女性3人が転倒して軽傷を負った。
都交通局によると、車両のほか地上設備が損傷しており、復旧まで数日を要する可能性もある。代替輸送のため、都営バスを増便したほか、観光バスなどを臨時運行している。
日暮里駅(荒川区)はシャッターが閉じられたままで、通勤に使う予定だった江戸川区の会社員(29)は「会社の始業に間に合わないかも」と困り顔だった。
鉄道で運転見合わせが相次ぎ、帰宅困難者が駅に滞留したことから、自治体が一時滞在施設を設けた。足立区は北千住駅近くの小学校を開放し、身を寄せた47人にマットや毛布、水を差し入れた。茨城県取手市の会社員(29)は「疲れ切っていたので休める場所を設けてくれて本当にありがたい」と話した。
港区は品川駅から徒歩約15分の福祉施設を開放し、7人が利用した。帰宅できない人が続出した2011年3月の東日本大震災を教訓に、避難者の受け入れについて区と施設が協定を結んでおり、素早く対応できたという。区防災課の鈴木健課長(48)は「今後も災害に備え、受け入れ態勢の拡充を検討したい」と述べた。
JR新橋駅前のタクシー乗り場には、8日未明になっても行列ができていた。飲食店店長(63)は7日午後10時半過ぎに店を出た直後、地震に遭遇。横浜市の自宅に帰るため列に並んだが、乗ったのは8日午前3時近くだった。「まさかこんなに待つとは……。くたびれました」と苦笑いしていた。
東海道新幹線が発着するJR品川駅は、地震の影響で8日未明まで停電。帰宅できなくなった会社員ら100人超がタクシー待ちの列を作った。
京都からの新幹線が遅れ、午前1時40分頃に下車した世田谷区の会社員(48)は「列車が急停止したので肝を冷やした。惨事にならなくてよかった」と話した。
列の最後尾の人がタクシーに乗り込んだのは、午前2時20分過ぎだった。
震度5弱を観測した埼玉県草加市では7日午後11時10分頃、同市の男性(54)方から出火し、木造3階建て住宅を全焼した。草加署によると、男性の妻(50)が煙を吸い込んで病院に搬送された。
千葉県袖ケ浦市では地震直後、「富士石油袖ケ浦製油所」で油が漏れ出し、高温の配管付近から出火した。市消防本部によると、従業員らが消火器を使って10分ほどで消し止め、けが人はなかった。