【皇室のトリビア】#36
数カ月前だったが、宮内庁関係者から、こんなことを言われた。
「週刊誌は眞子さまと小室さんのことをクソミソに書いていますが、もしどちらかが倒れたらどう責任を取るのでしょう。上皇后さま(美智子さま)が皇后時代に週刊誌のバッシングで失語症になりましたが、今回も同じことが起こるまで続くのでしょうか。皇族だって人権はあるんです。そのことを忘れていますね」
幸いに、何事もなかったことから、2人は気丈なカップルなのだろうと思ったのだが、実際はそうではなかったのだ。
10月1日、宮内庁は眞子さまと小室圭さんの結婚を正式発表すると同時に、眞子さまが「結婚に関するご自身や家族、相手とその家族への誹謗中傷と感じられる出来事を長期にわたって反復的に体験した結果、複雑性PTSD(心的外傷後ストレス障害)と診断された」と発表した。学校のいじめなら、いじめる連中は数十人だが、眞子さまの場合はマスメディアに加え、それに同調する大勢の国民からネット上で個人攻撃を受けたのである。平気でいられるはずがなかったのだ。
他人のプライバシーや名誉を尊重するのは、マスメディアに関わる人なら基本のキであるのに、なぜ、あれほどヒステリックに報じたのだろうか。考えられるのは、小室批判の記事が載ると雑誌は売れ、テレビは視聴率が上がるからだ。オンラインの普及で週刊誌は売れなくなり、テレビを見ない人たちが増えて視聴率が下がる一方なのだから、確実に売れるテーマがあれば飛びつくのは当然だろう。
さらに、眞子さまや小室さんへの非難なら訴えられない安心感もあったはずだ。もし訴訟の可能性があれば、もっと慎重になったはずである。
もう一つは、女性天皇・女性宮家を潰したい連中が、ネット上でここぞとばかりに小室さん批判を悪用して騒いだからだ。「女性天皇を認めたら、小室みたいなやつが“殿下”なんて呼ばれるんですよ」というわけである。
ところが、これまで非難一色だったのが、最近になって潮目が変わり始めている。その一例が、森暢平・成城大学教授が書いたサンデー毎日「『借金報道』週刊誌に異議あり」などだ。行き過ぎた小室さん叩きや眞子さまの結婚非難に、おかしいと気づいてブレーキを踏み始めたのだろう。メディアは、宮内庁の発表で眞子さまの病気を知った以上、今後は自らが報じた記事がもたらす結果に責任を負うことになる。
今回の“騒動”は、皇室の行く末に深刻な問題を残した。それは、簡単にリセットできない深刻さである。たとえば、皇族のプライベートを暴き立て、根拠のない情報を織り交ぜておもちゃにした連中のせいで、間違いなく佳子さま、愛子さま、さらに悠仁さまの結婚相手を探すのが困難になったことである。
どこの家庭だって問題の一つや二つは抱えているはず。それが、皇族と結婚することで隠されていた問題が暴かれ、あれやこれやと書き立てられるのだ。結婚する一般人にすれば、恐怖以外の何者でもない。今から60年以上も前に、皇太子の花嫁候補にされた途端に次々と候補から去っていったが、今回の騒動によって、まともな人なら皇族と結婚しようなんて思わなくなったはずである。(つづく)