広島原爆「黒い雨」を巡り国が救済拡大方針を示したことを受け、従来の援護対象区域外で雨に遭った広島市内の189人が11日、被爆者健康手帳の交付を求め広島市に集団申請した。国が新たな審査方法を示していない中、多数の「黒い雨被爆者」が一刻も早い救済を求めていることを伝える狙い。
午前10時から市内の会議室を本人ら100人以上が訪れ、原爆投下当時にいた場所や黒い雨の様子を書き込んだ申請書を手渡した。市職員約20人が対応し、内容に不備がないか点検。通常は約1カ月後に聞き取りの面接を実施するが、市職員は「国が救済方法を示していないため時間を頂きたい」と、まだ面接に入れないことを説明した。支援者によると、市以外でもこの日少なくとも20人以上が申請したとみられるという。
9歳の時に旧砂谷村(現広島市佐伯区)で雨を浴びた前田勝司さん(85)はこの日、マイクロバスを手配し同村で雨に遭った24人を率いて申請した。「同じ空の下で、同じ黒い雨に遭った。今まで放置されてきたことが残念。できるだけ多くの人が手帳を受け取れるといい」と願った。
過去に3回実施された雨が降った範囲に関する調査で「降雨域外」とされてきた地域から申請も。爆心地の西約30キロ、旧吉和村(現広島県廿日市市)で雨を浴びた住田康雄さん(85)=広島市安佐南区=は「吉和村にも雨が降ったと訴えたい。諦めかけた時もあったけど、被害を認めない国に腹が立ってきた。今度こそ手帳がほしい」と話した。
県・市は「降雨域外」にも雨が降った可能性を指摘し、「援護対象となりうるよう、控訴審判決を尊重した制度設計」をするよう、国に要請している。
「黒い雨訴訟」を巡っては、区域外で雨に遭った84人全員を被爆者と認める広島高裁判決が7月に確定。政府の救済拡大方針を受け、訴訟の支援団体が9月、原告以外の手帳申請に関する相談会を実施した。弁護団事務局長の竹森雅泰弁護士は「これだけ多くの黒い雨被爆者が手帳を待ち望んでいる。皆さん高齢で時間がない。国は早く基準を改定し、手帳交付すべきだ」と求めた。【小山美砂】