北九州市若松区で、住民がサルに襲われる被害が相次いでいる。今月2日までの約2か月間に、小学生~80歳代の男女22人が脚をかまれるなどしてけがを負った。同区でのサルの目撃情報も昨年度全体の3倍近くに上っており、市は群れを離れて単独で行動する「ハナレザル」とみているが、捕獲には至っていない。専門家は「見つけても刺激せずにその場を離れてほしい」と注意を呼び掛けている。(池田圭太)
市鳥獣被害対策課によると、サルによる被害は、8月7日から今月2日までに若松区内の計21か所で発生。8月17日には、二島地区の小学4年の女児が自宅の庭で脚をかまれたほか、9月9日には畑谷町の路上で下校中だった小学6年の女児が右太ももをかまれた。被害が確認された22人のうち16人が女性だった。
いずれも同じサルによる被害とみられ、最初は山に近い地域で多かったが、最近は市街地でも発生している。
サルの目撃件数も急増。過去最多だった昨年度は市内で214件、うち若松区では98件だった。今年度は8月末時点で市内は324件。また、若松区だけを見ると、9月末までに264件に上り、既に昨年度1年間の数字を上回っている。
市は区内各所に注意を促す看板などを設置。最初に被害の出た安屋、有毛両地区に箱わな(高さ71センチ、奥行き106センチ、幅57センチ)を2基設置し、果物や落花生など餌を変えて捕獲を試みたが、かかったのはタヌキ1匹だった。このため、9月27日までに、2基とも目撃情報の多い「響灘緑地・グリーンパーク」に移設した。
同市小倉北区の動物園「到津の森公園」の飼育展示係長、高橋
能理子
(のりこ)さん(41)によると、野生のニホンザルは警戒心が強く、自ら人に危害を加えることは珍しいといい、「人から餌をもらって、『人間は怖くない』と学習した可能性もある」と話す。
その上で、「サルは賢く、今の時期は山に餌も豊富なので、わなで捕らえるのは相当難しいのではないか」と指摘。「安易に餌を与えると、慣れて人里に出てくるようになる。見つけても餌は与えず、刺激せずにその場を離れてほしい」と呼びかけている。
◆香春岳の群れ 派生の個体か
北九州市では2007~08年にも、八幡西区などで市民や犬猫が相次いでサルに襲われ、被害件数は200件近くに上った。このサルは08年12月に同区内でわなで捕獲された。
市鳥獣被害対策課によると、市内で06年頃から50頭前後の群れが確認されるようになった。市に隣接する香春町の香春岳をすみかとするサルが周辺地域を回遊したとみられており、市は今回のサルは、この群れから派生した個体とみている。
サルの習性に詳しい同市小倉北区の獣医師、外平友佳理さん(51)によると、ニホンザルの若い雄は繁殖や力試しのために群れから離れる習性があるという。市も目撃情報から4歳ほどの雄とみており、外平さんは「退屈しのぎや、自分の力を誇示するために人を襲っているとも考えられる」と指摘する。
外平さんによると、八幡西区で捕獲されたサルは関係者の間で「八幡の八兵衛」と呼ばれた。このサルは人を襲う可能性があるとして安楽死処分されており、市は今回のサルも捕獲された場合は同様の処分とする方針だ。