《横浜市の旧大口病院(現・横浜はじめ病院、休診中)で平成28年、入院患者3人の点滴に消毒液を混入し中毒死させたとして、殺人罪などに問われた元看護師、久保木愛弓被告(34)の公判は、被告人質問が続いている。休憩が明けて開廷すると、裁判長は久保木被告に対し、裁判員から発言が聞き取れなかったという意見が出た旨を伝え、なるべくはっきりしゃべるよう告げた》
《弁護人は、過去に旧大口病院で、容体が急変し死亡した患者の家族に看護師らが責められている場面に久保木被告が居合わせたことについて、どのように感じたか問いかけた》
久保木被告「一番強く感じたのは、怖いということです」
《旧大口病院には終末期の患者が多く入院。弁護人は、当時の久保木被告の心身の体調についても尋ねた。被告は、平成28年5月前後には退職したいと考えていたこと、気力が湧かなかったり、過食したりといった症状が出ていたと話した。
《弁護人は、犯行動機や手口についても話を進める。動機について久保木被告は、これまでの答弁と変わらず、勤務中に患者が死亡し遺族から糾弾されることを避けるためだったとした。一方で、犯行を思いついたきっかけや、どの程度消毒液を注入したかなどについては「覚えていない」と答えた》
《続いて話題は、最初の被害者である興津朝江さん=当時(78)=に対する犯行に移った》
《興津さんは自宅に帰りたがる患者で、無断で外出しては連れ戻されることもあった。平成28年9月15日、無断外出しようとしていたため日勤中の久保木被告が連れ戻した際、興津さんは、梅干しを買いに行きたかったと話したという。なぜ興津さんの点滴にヂアミトールを注射したのかと問われた久保木被告は、より小さく、ぼそぼそとした口調で答えた》
久保木被告「私の次の夜勤までに、何とか興津さんに退院してもらおうと」
《興津さんは自宅で転倒し右ひじと右ひざを負傷し入院していた。状態は徐々に良くなっており、退院も視野に入っていた。弁護人からその点について言及されると、久保木被告はこう答えた》
久保木被告「次に私の勤務の時に、退院しているか分かりませんでした」
《犯行に使った消毒液「ヂアミトール」はナースステーションにあったもので、注射器を直接瓶に刺して吸い上げた。犯行の際は周囲に人がいないか確認し、点滴に注射するまでは白衣のポケットの中に注射器をしまっていたという》
弁護人「(犯行後)自分がしたことに対して不安などはなかったか」
久保木被告「いいえ」
弁護人「興津さんが亡くなったことを聞いたときの心境は」
久保木被告「(数秒沈黙し)本当に申し訳ないですが、その時は、ほっとした気持ちが大きかった」
弁護人「後悔はしませんでしたか」
久保木被告「はい」
《終始小さく弱い声で話す久保木被告。だがその回答に迷いは見られないようだった》