名古屋市中区錦3の漫画喫茶で昨年5月に男性銀行員を刺殺し、現場に駆け付けた警察官も殺害しようとしたとして、殺人や殺人未遂などの罪に問われた住所不定、無職、稲田府見洋(ふみひろ)被告(23)の裁判員裁判の初公判が24日、名古屋地裁(神田大助裁判長)で開かれた。稲田被告は起訴内容を認めたが、弁護側は事件当時の刑事責任能力と殺人未遂罪の成立について争う姿勢を示した。
検察側は冒頭陳述で「アルバイトをしながら各地を転々とする不安定な生活で不安といら立ちを感じ、他人を殺したいと思うに至った」と指摘。「被害者が紙をめくる音に立腹し、殺害した」と述べた。一方、弁護側は「被告は事件当時、統合失調症の症状で善悪の判断がつかず、行動を制御できなかった」として責任能力はなかったと主張。殺人未遂罪については実行行為も殺意もなかったとした。
この日は、被害者を突き刺す被告を止めに入った漫画喫茶と同じビルのカラオケ店の男性店員が検察側の証人として出廷。「被告は被害者に向かって『殺す』と言い、殺意を感じた」と証言した。
起訴状によると、稲田被告は昨年5月17日夜、漫画喫茶内で、面識のない愛知県尾張旭市の銀行員、大竹智之さん(当時35歳)を果物ナイフで刺して殺害し、現場に駆け付けた県警中署の男性巡査部長にもナイフを振り下ろして殺害しようとしたとしている。【井口慎太郎】