110番から到着まで、10分足らずの凶行 宮崎・高千穂3人死亡

宮崎県高千穂町の民家で3人が死亡した事件で、110番からわずか数分で3人が刺されるなどしていたことが、捜査関係者への取材で判明した。民家の電話は家庭内暴力(DV)対応で警察に登録されており、通報から10分足らずで警察官が到着したが、既に3人は倒れていた。県警はDV加害者とされる男性に口頭注意もしていたが、この男性が短時間で2人を襲った後、自殺したとみられる。
死亡したのは、この家に住む会社員、甲斐邦雄さん(67)と父親で農業の義人(よしと)さん(91)、甲斐さんの義理の息子で自営業の須磨俊(さとし)さん(45)=鹿児島県志布志市。民家には甲斐さんの80代の母親もいたが、けがはなかった。母親の話によると、甲斐さんの義理の息子が刃物を持って民家を訪れ、甲斐さん、義人さんを襲った後に自ら腹を刺したという。
義理の息子は甲斐さんの長女の夫。長女は夫のDVから避難するため、子供と宮崎県内に転居したり、鹿児島県に戻ったりして両県警に複数回相談していた。
宮崎県警によると、2020年2月に鹿児島県警から長女が宮崎に避難していると連絡があった。21年10月3日、荷物を取りに長女が鹿児島へ戻った際に夫に会い、宮崎のアパートまでついてきたため、翌4日に警察官が夫に鹿児島に戻って連絡を取らないよう口頭で注意。同23日の事件直前には宮崎県警の勧めで別の場所に転居していた。
県警は9月、長女の実家である甲斐さん宅の電話を110番するだけで氏名や住所が分かる通報登録システムに登録するよう勧め、甲斐さんは登録していた。しかし、事件当日は通報から10分足らずで警察官が駆けつけたが、3人は既に倒れていた。
宮崎、鹿児島両県警によると、長女は夫から殴られたなどと訴えたが、被害届は出さなかったという。事件後、長女と子供の無事は確認されている。
DV被害者を支援するNPO法人「全国女性シェルターネット」共同代表の北仲千里さんは「DVを背景にした事件では過去にも親族が被害に遭うケースがあり、親族も当面は自宅以外に避難するという考えが広まりつつある。事件前に被害者側が警察にどのように加害者の危険性を伝えていたか、警察側が有効な助言をしていたのかどうかを検証する必要がある」と話している。【塩月由香、白川徹、中里顕】