世界では感染者増加に転じた新型コロナ 国内「第6波」はあるか

新型コロナウイルス対策の緊急事態宣言が解除されてから、31日で1カ月が経過する。海外では英国やロシアなどで感染者が増加している一方、日本国内は減少傾向が続いている。ただ一部の地域ではクラスター(感染者集団)が発生しており、月末のハロウィーン関連のイベントや年末年始の帰省、旅行など人流(人の流れ)の活発化が予想される中、専門家は「第6波」への警戒を引き続き求めている。
第5波(7~8月)の新規感染者数のピークは、全国で2万5851人(8月20日)、東京都は5908人(同13日)だったが、28日の全国の感染者数は268人で100分の1程度に下がった。一時は2000人を超えた全国の重症者も145人に減った。
第5波が減速した要因は明確には定まっていないものの、感染予防効果があるとされるワクチン接種が高齢者を中心に急速に進んだ影響が指摘されている。厚生労働省に感染症対策を助言する専門家組織「アドバイザリーボード(AB)」は「多くの市民や事業者の感染対策への協力やワクチン接種率の向上などにより、全国的に新規感染者数の減少が続いた」と分析している。
内閣官房によると、全国民のうちワクチンの2回接種を終えた人は、29日時点で71・2%。特に、重症化しやすい65歳以上の高齢者の接種率は9割に上り、高齢者に比べて接種が遅れた現役世代も40代で7割、50代は8割と多くの人が接種を済ませている。
政府の「基本的対処方針分科会」メンバーの谷口清州・国立病院機構三重病院長も「第5波が急減したのは、感染者が急増したのとちょうど同じタイミングで、コロナのワクチン接種が急速に増えたからだ。コロナワクチンは、接種してしばらくは抗体価(抗体の量)がとても高く、非常に高い感染予防効果がある。マスクをして行動も自粛するなど相乗効果も大きかった」と指摘する。
感染リスクに対する国民の認識が高まったことも要因の一つとみられる。京都大の西浦博教授(理論疫学)によると、第5波で感染状況が悪化し、東京オリンピックが開幕する直前に、国民がリスクの高い行動を控えるようになったことで、感染者の伸びが抑えられたと考えられるという。また、エアコンを使う夏場から過ごしやすい季節に変わったことから、「密集した場所などで換気をしやすくなったことも影響したのでは」(厚労省幹部)との声もある。
一方、世界保健機関(WHO)は28日、世界の1週間の新規感染者と死者数が2カ月ぶりに増加に転じたと公表するなど、海外では依然として感染拡大が続いている。日本全体では減少傾向を示しているものの、大阪府で29日確認された新規感染者は52人で、28日に続いて2日連続で前週の同じ曜日を上回った。全国でも地域によってはクラスターも発生している。
年末年始を控え、経済活動の再開が本格化する中、ABは「感染者数の減少速度の鈍化や下げ止まりが懸念される。気温が低下していくことで、屋内での活動が増えることにも留意が必要だ」と警鐘を鳴らしている。【矢澤秀範、永山悦子】