衆院選が終わった。自民党は261議席を取ったが、決して楽な戦いではなかった。何故なのか。自民党が「保守主義の精神」を忘れたためである。自民党らしさ、保守政党らしさを失った自民党に魅力など何もない、というのが率直な評価である。
現在の日本に求められているのは、「国家としての日本」をどうするかである。他にはない。現在の岸田文雄首相率いる自民党に、国家としての日本を如何(いか)にするかの明確な指針が見えなかった。「自民党に任せておいて大丈夫なのか」というのが国民の総意だろう。
岸田首相は所信表明演説で、アフリカの諺(ことわざ)といわれる言葉を引用した。
「早く行きたければ一人で進め。遠くまで行きたければみんなで進め」
正直に申し上げて、このような言葉を引用することに何の意味があったのか、まったく分からなかった。
真面目に考えてみたい。遠くまでいくことが正しいのだろうか。遠くおかしな場所に行っては困るのではないか。遠くなくても近い場所によい場所があるのではないか。遠い北朝鮮にでも行きたい人はいるのか?
そもそも、国家の指導者に求められているのは、何処(どこ)なのか分からない遠いところにいくことではないだろう。自らが国家の進むべき目的を定めて、一歩でも二歩でもその目的地に近づくことではないだろうか。遠ければいいなどというのは、論外だ。
さらに言いたい。
岸田首相は「聞く耳」があることを強調する。しかし、「聞く耳」を持つことは政治家の最低限の条件だ。確かに、他人の意見に耳を傾けない政治家は駄目だろう。独断専行で国を誤る。
しかしながら、「聞く耳」を持ち、「ああ、そうですね」と他人の意見に同調することが、政治家の役割なのだろうか。政治家は「聞く耳」を持ちながらも信念に基づきながら決断する力がなければならない。たとえ、マスコミにたたかれようともこの政策だけは実現したいという、あえて「聞く耳」を持たないことも宰相の条件だ。
安倍晋三政権においては、集団的自衛権の限定的な行使容認を決定した。これはほとんど全てのマスコミから批判され、自らの支持率を下げることになるような決断だった。
しかしながら、これは日本にとって絶対に必要な決断だった。多くのマスコミに批判されながらも、日本にとって必要な決断を下した安倍元首相は後世、必ずや評価されるであろう。
政治家に必要なのは国民の声に耳を傾けながらも、国家のために決断することだ。
自民党よ、覚醒せよ!
■岩田温(いわた・あつし) 1983年、静岡県生まれ。早稲田大学政治経済学部政治学科卒業、同大学院修士課程修了。拓殖大学客員研究員などを経て、現在、大和大学政治経済学部准教授。専攻は政治哲学。著書・共著に『「リベラル」という病』(彩図社)、『偽善者の見破り方 リベラル・メディアの「おかしな議論」を斬る』(イースト・プレス)、『なぜ彼らは北朝鮮の「チュチェ思想」に従うのか』(扶桑社)など。ユーチューブで「岩田温チャンネル」を配信中。