神戸市北区で2017年、家族や近隣住民ら3人を殺害し、2人に重傷を負わせたとして殺人罪などに問われた無職、竹島叶実(かなみ)被告(30)の裁判員裁判で、神戸地裁は4日、無罪(求刑・無期懲役)を言い渡した。被告は事実関係を認めていたが、飯島健太郎裁判長は「被告は心神喪失状態だった疑いが残る」と述べ、刑事責任能力を認めなかった。
被告が事件前夜に「この世界の人間は君と私以外、(人間と同じ姿だが、自我や感情がない)哲学的ゾンビなんだよ」とする知人女性の幻聴を聞き、「ゾンビを倒して女性と結婚する」と決意して事件に及んだことに裁判上の争いはなかった。善悪を判断し、行動を制御する刑事責任能力があったかどうかが争点で、検察側は心神耗弱にとどまるとして責任能力は失われていないと主張。弁護側は責任能力はなかったとして無罪を訴えた。
判決は、被告の精神状態について異なる見解を示した医師2人の精神鑑定結果を検討。「犯行を思いとどまる能力を持っていた」と検察側の見解に合った医師の鑑定については、医師の面接が被告の拒絶により1回で時間も5分程度と限られたため、「手法が不十分」と信用性を否定した。一方、「妄想型統合失調症の圧倒的な影響を受けて犯行に及んだ」と弁護側の主張に合った医師の鑑定に対しては、医師と被告の面接が11回に上っており、「鑑定の前提条件に誤りはない」と評価した。
その上で飯島裁判長は、被告が周囲の人をゾンビだと信じ切っていた可能性が高いとし、「妄想の圧倒的影響下で犯行に及んだ疑いを払拭(ふっしょく)できない」と判断。心神喪失者の行為は罰しないとする刑法の規定に基づき、無罪と結論付けた。
神戸地検の山下裕之次席検事は「判決内容をよく検討し、上級庁とも協議の上、適切に対応したい」とコメントした。
判決によると、被告は17年7月16日早朝、自宅で祖父の南部達夫さん(当時83歳)と祖母の観雪(みゆき)さん(同83歳)を金属バットや包丁で殺害。止めに入った母親(57)にも重傷を負わせた。さらに、近くの民家に侵入して辻やゑ子さん(同79歳)を刺殺し、近隣女性(69)に重傷を負わせた。
心神喪失による無罪判決が確定した場合、一般的に「心神喪失者等医療観察法」に基づいて裁判所が審判を開き、入院など被告の処遇を決める。【巽賢司、村田愛】