全国で唯一、特定危険指定暴力団に指定されている工藤会(本部・北九州市)の事務所が次々と撤去に追い込まれている。福岡県警によると、工藤会トップで総裁の野村悟被告(74)らを逮捕した2014年9月以降、少なくとも22か所の事務所が撤去された。一方、新たな開設はなく、居酒屋などを会合場所に使っているという。
工藤会の事務所を巡っては先月、主要組織、田中組の本部事務所と紺屋町事務所(いずれも北九州市)の解体工事が始まった。
田中組は野村被告の出身母体。紺屋町事務所は北九州市小倉北区の繁華街にあり、かつては組員が頻繁に出入りし、警察が何度も捜索した。福岡県警が野村被告らを逮捕する「頂上作戦」に踏み切った2か月後の14年11月には、「謀議を行う恐れがある」として暴力団対策法に基づき、当時の工藤会本部や田中組本部事務所などとともに使用制限命令が出された。
県警は、工藤会事務所の全体数や詳しい場所を明らかにしていないが、北九州市を中心に市外にも事務所がある。22か所の撤去は、警察に多くの組員が逮捕されて組が存続できなくなったり、撤去を求める住民運動が高まったりしたことなどがきっかけになったという。みかじめ料収入の減少や、野村被告らの裁判での弁護士費用などで資金力が低下したところに事務所の維持管理費が重なり、大きな負担となっていることも背景にあるとみられる。
工藤会の本部事務所「工藤会館」(北九州市小倉北区神岳)は14年11月に使用制限命令が出され、その後も延長がくり返されて一度も解除されないまま、昨年2月に撤去された。その後、新たに本部となった事務所(同区三郎丸)も昨年7月に命令が出され、今年7月に撤去が発表された。現在は同区宇佐町の事務所が本部になったが、ここも8月に命令が出され、使えない状態が続いている。
捜査関係者によると、工藤会館に使用制限命令が出た後、工藤会執行部は毎月の会合を北九州市内のカラオケボックスで行うなどしていた。そうした動きを把握した県警は、店舗側に「暴力団を利する行為」として県暴力団排除条例に抵触することを指摘。その後、工藤会は特定の場所や店を決めず、居酒屋やファミリーレストランで会合をしていることが確認されているという。
福岡県は12月、改正県暴排条例を施行する。新たな暴力団事務所の開設禁止区域を、大幅に拡大する内容だ。既存の事務所は摘発の対象外だが、県内の暴力団事務所の約9割が区域内にあたり、現在の事務所を手放せば、撤去後に周辺に新たな事務所を設置することは事実上、困難となる。県警は、今後も工藤会側に事務所撤去を働きかけるとともに、水面下での活動を警戒する。
暴力団排除に詳しい疋田
淳
(きよし) 弁護士(大阪弁護士会)は「暴力団の事務所は存在するだけで、市民を威圧する。市民や警察、暴力追放運動推進センターなどが一体となり、訴訟などの撤去に向けた取り組みを、さらに強化することが必要だ」と話している。