「海のように」浸水した川口市、長年悩まされた雨水の市街地逆流…地下の貯留施設で「時間稼ぐ」

国の1級河川・荒川などが流れる埼玉県川口市が、治水事業を急ピッチで進めている。2019年10月の台風19号で浸水被害を受けたほか、マンション建設などによる急速な都市化で自然の保水機能は失われつつあり、対策が喫緊の課題となっている。雨水貯留施設の整備や水路の堤防強化……。市は「減災」に向けて様々な方法を駆使した策を講じている。(児玉森生)
「ガードレールの高さぐらいまで水位が上がり、ガレージの車も水没した。周辺は海のような状態だった」
同市柳崎の会社員(56)は台風19号の浸水被害をそう振り返る。県や市によると、市内では計約140棟が床下・床上浸水する被害があった。特に、荒川の支流・芝川に近い柳崎地区では1メートルほどの高さまで水位が上がったという。
同市では長年、河川の越水や河川の水位が上がることで、雨水が市街地に逆流する「内水氾濫」にも悩まされてきた。1980年代後半から雨水をためる貯留施設を整備し、2018年に商業施設「アリオ川口」前の公園地下に5800トンの施設を設置。台風19号ではほぼ満杯まで水をため、周辺の浸水被害を最小限に抑える効果があったという。

市は台風19号後、新たに柳崎公園のグラウンド地下に1000トンの貯留施設を整備。25年度までに同公園を含む市内八つの公園の10か所に計6400トン分の施設も計画する。豪雨や台風などで冠水し、通行に支障が出ていたJR東川口駅近くの武蔵野線高架下の道路についても、23年度までに市道地下約9メートルの深さに直径4・65メートルの貯留管を418メートル設置する予定だ。完成すれば、計7100トンの水がためられるようになり、道路が水没するリスクを下げられる。
都市部は雨水を保水する森林や緑地が少なく、側溝から川に流すしかないのが実情だ。市幹部は「かつては雨水を早く川に流すことが基本だったが、ゲリラ豪雨などで雨量が増え、川がいっぱいになってあふれたり、雨水が逆流したりする恐れもある」と指摘。「貯留施設で水をためるなどして時間を稼ぎ、河川の水位上昇をどう抑えるかがカギになる」と話している。

小規模水路の対策も強化している。市によると、台風19号後、一部水路で堤防が低い場所が見つかった。市はこうした箇所から水があふれた可能性があるとみてコンクリートと同程度の水圧に耐えられる特製のステンレスパネルを設置してかさ上げし、28年度までに水路2本の両岸で計1340メートル分を設置する方針だ。