中東シリアで武装勢力に拘束されたのち、解放されたジャーナリストの安田純平さんは、2018年10月の帰国から3年になるのに、今なお、悪質な誹謗中傷に悩まされ続けている。先日、月刊誌『Will』の出版元(ワック株式会社)を相手取った名誉毀損訴訟で勝訴した安田さんに、ネット上での誹謗中傷とメディアの関係について聞いた。(ジャーナリスト・志葉玲) ●ワックを訴えたきっかけになったコラム 安田さんがワックに対して訴訟を起こすきっかけとなったのは、月刊誌『Will』(2019年1月号)に掲載されたYouTuber・KAZUYA氏による「”イスラムダンク”安田純平の謎」という見出しのコラムだ。 この中で、KAZUYA氏は、安田さんの拘束について「あまりにも不可解な点が山積」しているとして、「人質ビジネスでは? と邪推してしまいます」などと書いた。まるで安田さんが、拘束者と組んで身代金を騙し取ろうとしていたかのように読める内容だ。 ところが、KAZUYA氏は、安田さん本人に取材しておらず、コラムで書いている内容も、そのほとんどが安田さんの記者会見からの引用で、KAZUYA氏が「不可解な点」とすることも、裁判で安田さんに全面的に反論された。 たとえば、KAZUYA氏は、安田さんの帰国後の会見から「知らない人について行って捕まった」という発言部分を切り取って、「ジャーナリストとしての危機感不足は否めません」と批判した。 だが、安田さんは、事前に現地武装勢力への密着取材のため、その勢力の司令官と連絡を取り、取材許可を得ていた。その勢力と合流する前に、別の勢力に拘束されたことは不幸だったが、安田さんの行動は、紛争地取材のセオリーから逸脱したものではない。 安田さん自身も「シリアで取材者を複数の組織がリレー式に受け入れることが内戦初期からおこなわれていて、その都度、自分の知らない人が迎えに来るということは珍しいことではなかった」と裁判の陳述書の中で述べている。 また、KAZUYA氏は、拘束中、安田さんがテレビを見れた時期があったこと、食事は一日二食でスイーツもたまに提供されたことから、「大方の人が予想する監禁拘束生活とはかけ離れた説明でした」と書いている。 これに対して、安田さんは、同じくシリアで拘束された米国やスペイン、ドイツの記者たちの報告に言及して、いずれも部屋にテレビがあり、スイーツが提供されることもあったと指摘した。
中東シリアで武装勢力に拘束されたのち、解放されたジャーナリストの安田純平さんは、2018年10月の帰国から3年になるのに、今なお、悪質な誹謗中傷に悩まされ続けている。先日、月刊誌『Will』の出版元(ワック株式会社)を相手取った名誉毀損訴訟で勝訴した安田さんに、ネット上での誹謗中傷とメディアの関係について聞いた。(ジャーナリスト・志葉玲)
安田さんがワックに対して訴訟を起こすきっかけとなったのは、月刊誌『Will』(2019年1月号)に掲載されたYouTuber・KAZUYA氏による「”イスラムダンク”安田純平の謎」という見出しのコラムだ。
この中で、KAZUYA氏は、安田さんの拘束について「あまりにも不可解な点が山積」しているとして、「人質ビジネスでは? と邪推してしまいます」などと書いた。まるで安田さんが、拘束者と組んで身代金を騙し取ろうとしていたかのように読める内容だ。
ところが、KAZUYA氏は、安田さん本人に取材しておらず、コラムで書いている内容も、そのほとんどが安田さんの記者会見からの引用で、KAZUYA氏が「不可解な点」とすることも、裁判で安田さんに全面的に反論された。
たとえば、KAZUYA氏は、安田さんの帰国後の会見から「知らない人について行って捕まった」という発言部分を切り取って、「ジャーナリストとしての危機感不足は否めません」と批判した。
だが、安田さんは、事前に現地武装勢力への密着取材のため、その勢力の司令官と連絡を取り、取材許可を得ていた。その勢力と合流する前に、別の勢力に拘束されたことは不幸だったが、安田さんの行動は、紛争地取材のセオリーから逸脱したものではない。
安田さん自身も「シリアで取材者を複数の組織がリレー式に受け入れることが内戦初期からおこなわれていて、その都度、自分の知らない人が迎えに来るということは珍しいことではなかった」と裁判の陳述書の中で述べている。
また、KAZUYA氏は、拘束中、安田さんがテレビを見れた時期があったこと、食事は一日二食でスイーツもたまに提供されたことから、「大方の人が予想する監禁拘束生活とはかけ離れた説明でした」と書いている。
これに対して、安田さんは、同じくシリアで拘束された米国やスペイン、ドイツの記者たちの報告に言及して、いずれも部屋にテレビがあり、スイーツが提供されることもあったと指摘した。