仮想通貨(暗号資産)を使った取引への投資を無登録で勧誘したとして、警視庁生活経済課は10日、東京都世田谷区駒沢1、会社役員、玉井暁(あきら)容疑者(53)ら男女7人を金融商品取引法違反(無登録営業)の疑いで逮捕したと発表した。同課は、2019年4月~20年11月に計約650億円を違法に集めていたとみて調べる。
逮捕容疑は20年6月14日~11月11日ごろ、東京や沖縄、福岡で開いたセミナーで、金融商品取引業の登録がないのに、異なる市場で取引されるビットコインなど仮想通貨の価格差を利用して運用益を出す「裁定取引(アービトラージ)」に出資すれば配当金を得られるとうたい6人を勧誘したとしている。計約1700万円を集めたとみられる。同課は7人の容疑の認否を明らかにしていない。
捜査関係者によると、玉井容疑者らは19年3月ごろから国内各地でセミナーを開催。海外に設立した「ジュビリーエース」や「ジェンコ」などの「ジュビリーグループ」が運用するとした仮想通貨を使った金融商品に投資すれば、「月利2・5~20%」などの高配当が得られるとうたって勧誘していたという。「人工知能(AI)を使ったシステムはシンガポール大卒業の優秀な人物が開発した」などと説明していた。
ほかにも、新規会員を集めると「出資額の10%の紹介料」を受け取れるなどとも宣伝し、「マルチ商法」の手法で出資者から約10万3000件の契約を獲得していたとされる。セミナーで言葉巧みに勧誘する玉井容疑者は出資者から「マルチのカリスマ」と呼ばれていた。
しかし、資金繰りが苦しくなり、20年11月に出入金が停止した。運営会社側は「金商法違反に抵触する恐れがあり、財務省関東財務局から出金を止められている」「必ず返金します」などと説明していた。
20年夏に出資者から相談を受けた警視庁は21年4~5月、玉井容疑者の自宅を家宅捜索するなどして捜査を進めていた。【柿崎誠、安達恒太郎、木原真希】