がん免疫治療薬「オプジーボ」を巡り、ノーベル医学生理学賞を受賞した本庶(ほんじょ)佑(たすく)・京都大特別教授(79)が小野薬品工業(大阪市)に特許使用料の分配金約262億円の支払いを求めた訴訟は12日、大阪地裁(谷有恒裁判長)で和解が成立した。公表した京大と小野薬品によると、小野薬品が本庶氏に解決金などの名目で50億円を支払うほか、京大に新設される基金に230億円を寄付。一方で、本庶氏が引き上げを求めていた使用料の分配率は維持することで合意した。
本庶氏の代理人弁護士によると、国内の訴訟で発明者に支払われる金額としては過去最高とみられる。
和解の基本合意書などによると、京大に設立されるのは「小野薬品・本庶 記念研究基金」。寄付金は優秀な若手研究者の育成・支援に充てられる。
本庶氏らは1992年、オプジーボの開発につながるたんぱく質「PD―1」を突き止めた。この発見を基にがん治療薬の開発が進み、本庶氏と小野薬品は2006年、特許の対価に関する契約を結んだ。オプジーボは14年に発売された。
訴状などによると、小野薬品は米国の製薬会社「メルク」とオプジーボの特許を巡って法廷闘争に発展したが、17年にメルク社が特許使用料を支払う内容で和解が成立した。本庶氏側はこの裁判に協力した際、「小野薬品は使用料の40%を支払うと提示したのに、実際は1%と後に通知された」と主張。差額などの支払いを求め、20年6月に提訴した。
一方、小野薬品側は「提示はしたが、上積みを求める本庶氏に断られ、(40%の)契約は成立しなかった」などと指摘。06年の契約に準じて1%の支払いが続いていたと反論していた。
訴訟を巡っては、地裁が21年9月、和解案を双方に提示。双方が和解に向けた協議を続けていた。
本庶氏は和解成立を受け、「企業から還流された資金や善意の寄付で、基礎研究を長期的展望で支援していきたい」との談話を発表。小野薬品も「当社と本庶氏はオプジーボの開発におけるそれぞれの貢献を高く評価するとともに、産学連携の新たな形を示すために和解によって訴訟を終了させることにした」とのコメントを出した。【松本紫帆】