人気移住先トップの市、風が吹くと「漂う悪臭」…県が7億5千万円かけて固めたセメントに亀裂

首都圏からの移住先として人気の山梨県北杜市で、大量に放置された産業廃棄物から発生する悪臭が問題となっている。山あいに放置された産廃は、有害ガスの拡散を防ぐために、県が約7億5000万円かけてセメントで固めたものの、表面に亀裂が入った状態で、約1キロ離れた集落にも臭気が漂う。地元のイメージに関わる問題だが、撤去には

莫大
(ばくだい) な費用がかかるため、県は対応に苦慮している。
産廃は下水道汚泥や廃石こうボード粉などで、市内の業者が同市須玉町の所有地2か所に計約2万立方メートルを野積みしたまま放置。1か所はサッカーグラウンド程度の広さで、ビル3階ぐらいの高さになる。周囲は水田地帯で、セメント色の巨大な塊は異様だ。
業者らは廃棄物処理法違反で起訴され、執行猶予付きの有罪が確定。2016年に県が撤去命令を出しても応じておらず、業者による撤去は望めない状況だ。県の調査で産廃内部から有害な硫化水素が検出されたことから、県は18年10月から1年4か月をかけ、産廃をセメントで固める行政代執行を実施した。
しかし、今年に入って県や市に悪臭の苦情が寄せられるようになった。県が確認したところ、表面に亀裂が入り、液体が漏れ出していた。今年8月の調査では硫化水素の検出はなかったが、周囲では臭気が感じられる。19年に東京から移り住んだという最寄りの集落の男性は、「風が吹くとにおいがして不快だ。撤去しなかった判断は正しかったのか」と憤る。
先月21日に現地を視察した長崎幸太郎知事は「悪臭がひどい」とし、県による撤去も視野に入れて解決を目指す考えを表明した。しかし、セメント固化にかかった費用の大半も業者から回収できていない中、多額の費用を追加で投じることには慎重意見もある。
八ヶ岳南麓の北杜市は、田舎暮らしを特集した雑誌で18年、人気移住先のトップになった。昨年度は転入者が転出者を約500人上回り、前年度の50倍近くに増えた。市も「地域のイメージダウンになりかねない」と懸念し、県と悪臭対策の協議を始めている。