大下さんは喪主の挨拶をする早貴被告の脇に立った【紀州のドン・ファンと元妻 最期の5カ月の真実】

【紀州のドン・ファンと元妻 最期の5カ月の真実】#92

私自身はこの怪事件を皆に知ってもらいたい気持ちが強かったので、どうしてもマスコミの力が必要だった。おかしな事件であると報じて欲しかったが、土壇場で金庫番の佐山さんが「マスコミ禁止」にしたので、偶然にも通夜・葬儀の写真を撮影するのは私だけになり、動画はスーさんだけが撮り続けた。

このような事件の場合、ドラマや小説では犯人が被害者の通夜・葬儀に姿を現すシーンが描かれ、そして現実でもそのようなことが多いので、警察は通夜の参列者に紛れて来るものだと思っていたが、どうやらその気配はないようだったので不思議な気持ちだった。もしかして警察は犯人の目星がついているので、その必要性を感じないのか? そのときはそのように思ったものである。

■寂しい通夜

寂しい通夜で、50人ぐらいしかいなかったのではなかろうか。

喪主の挨拶をするために立ち上がって参列席を向いた早貴被告が挨拶をし出すと、脇に大下さんが立った。

「早貴ちゃんひとりだけでは可哀想だと思って、とっさに脇に立ったのよ」

後で彼女はそのときの心境を打ち明けてくれたが、早貴被告の「3000万円をあげる」発言後に大下さんは明らかに彼女の擁護をするようになったのである。

「通夜の最中、スマホでゲームをしている若妻に対して、参列席から罵声が飛んだ」

後日、某週刊誌がこのような見出しで記事を掲載したが、これは全くのウソ、捏造、空想記事であり、そのような事実は一切なかったからあきれるばかりだ。

「参列した方から聞いたらしいですよ」

この週刊誌の編集者から事の次第を聞く機会があった。

「誰から聞いたの? 複数の方から聞いてる?」

「それは確かめていませんが、取材したのがベテランの記者の方だったので信じてしまいました」

実はこの通夜には共同通信社の若い記者も潜入していた。

「キミはあの週刊誌の記事がデタラメだということは知っているよね」

「ええ、罵声なんて飛んでいませんでした」

「では、なぜそうではなかったという記事を配信しないの?」

「それはニュースですか?」

若い男性記者が苦笑した。ニュースに関する価値観が全く異なっていることに私は衝撃を受けてしまったが、これがニュースでなかったら彼は何をニュースにするつもりなのだろうか。(つづく)

(吉田隆/記者、ジャーナリスト)