宇宙飛行士募集 日本人初の月面着陸に挑め

宇宙開発が民間新興企業の参入で活発になっている。日本も新時代を担う若手宇宙飛行士を育成し、宇宙での活動の場を広げたい。
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が13年ぶりに宇宙飛行士の新規募集を始めた。筆記試験や面接を経て、2023年に合格者を決めるという。採用人数は「若干名」という狭き門だ。
選抜された飛行士が担当する最大の仕事は、日米などが共同で月周回軌道に建設する宇宙基地への滞在や、月面着陸になる予定だ。日本人で初めて月面を踏むという歴史的な任務になる。多くの人に挑戦してもらいたい。
現役の日本人飛行士は現在7人で、平均年齢は50歳を超える。飛行士が実際に宇宙に行くまでには何年も訓練を積まねばならない。若返りが急務で、今後も定期的な採用が必要だ。
今回、応募資格が大幅に緩和された。理系の4年制大学卒業というこれまでの条件は撤廃され、文系でも応募できるようになった。「実務経験」も自然科学系の分野に限らないことになった。
これまで多かった科学者や医師、エンジニアだけでなく、サラリーマンや若手研究者ら幅広い職種の人にチャンスが広がったのではないか。身長の下限も158センチから149・5センチに下がり、小柄な人でも応募しやすくなった。
訓練に必要な泳力や、自動車運転免許の保有といった要件もなくなった。選抜後の努力や訓練で身につけられる能力や資格は応募段階で問う必要がないとの判断だという。門戸が広がり、多様な人材の応募が期待される。
米国は、これまで24年としていた月面着陸の時期を25年以降に延期した。月探査は技術的に難しく、今後も曲折が予想される。
宇宙開発の分野で飛行士は花形の職業だが、実際には、計画が思うように進まない時でも、自分を見失わず、着実に訓練を重ねられる粘り強さや、各国のスタッフと働く協調性などが求められる。
宇宙船の機能は向上しており、一般人も宇宙を訪問できる時代が到来している。飛行士には、経験を自分の言葉で語り、人々に宇宙開発の意義を訴えられる能力が必要になるだろう。
JAXAも、世界に向けた発信力や表現力を重視しており、選考過程では面接などを通じて発表・説明能力を審査する考えだ。日本人飛行士が月面から子供に語りかけるような場面の実現に向け、多彩な人材を登用してほしい。