医療機関が苦慮、コロナ病床は維持か縮小か…「第6波」なら再確保必要

新型コロナウイルス感染者の急拡大時の対応に、東京都内の医療機関が苦慮している。感染状況の改善で、都は10月上旬に、「第5波」で確保したコロナ病床から4割減らす方針を示しているが、再び感染者が増加に転じた際に2週間以内の増床を求めているからだ。即応が難しいとして病床を維持する施設がある一方、増床時の計画を立てて病床の縮小に踏み切る施設もあり、対応は分かれる。(山田佳代)
悩む都内医療機関

東京都北区の東京北医療センター。今秋以降、感染者の減少に伴って入院するコロナ患者がゼロの日もあるが、約40のコロナ病床を維持している。
都の減床方針を受け、センターでもコロナ病床の縮小を検討したが、看護師らスタッフの確保が課題となった。コロナ病床を回すには、多くの看護師を確保しなければならず、勤務ダイヤを全面的に組み替える必要があるが、2週間以内での対応は難しいとの結論に至った。
「コロナ病床を減らし、通常医療をもっと充実させたい。しかし、再拡大時に感染者を受け入れられない事態も避けなければならない」。センター管理者の宮崎国久医師は悩ましげに話す。

感染の「第5波」で、都内の新規感染者は8月13日にピークの5908人に達した。同月下旬以降は減少が続き、11月24日には今年最少の5人にまで減った。
こうした状況から、都は10月上旬、感染状況に応じて確保するコロナ病床の3段階の目安を設定。これまで都内で確保してきた6651床を4000床に減らす方針を公表した。
具体的には、1週間の平均新規感染者が500人未満にとどまっている現在は「レベル1」で4000床を維持。同500人以上などの条件で「レベル2」に引き上げ、5000床を確保する。同700人以上などで「レベル3」とし、確保できる最大数の6891床を用意する。レベルに応じた病床の確保にかかる期間は「2週間以内」とした。
都の担当者は「医療機関にとって増床は大変だと思うが、『第5波』の時のように入院できず、自宅で亡くなる患者を出さないようにするためにも、病床確保は重要だ」と語る。

コロナ病床を減らした医療機関は、増床に備えながら対応を検討している。
多摩地区でコロナ患者を受け入れてきた総合病院は10月上旬、コロナ病床を56床から26床に縮小。現在はコロナ患者用としてきた病棟の1フロアに、一般の患者も入院させている。コロナ病床を増やす際には、一般の患者を別のフロアや他病院に移す計画だが、男性院長は「即応するには、コロナ以外の患者の受け入れは一定程度の制限を設けざるを得ない」と明かす。
都病院協会の猪口正孝会長は「増床に備えながら通常医療を維持するのは、医療機関にとっては負担となる。各医療機関が、それぞれの実情や特性に応じて、柔軟に体制を検討するしかない」と話している。

新変異株 水際対策強化…成田や羽田 動線分け対応

新型コロナウイルスの新たな変異株「オミクロン株」の水際強化策で、厚生労働省は27日、成田や羽田、関西など国際線の発着する主要空港で、南アフリカなどの指定国に滞在歴がある人の到着が事前に分かった場合、空港での移動ルートを分け、その他の乗客らとの接触を避ける対応を始めた。
成田空港では、検疫官が到着客に対し、滞在先や体調などを記入した誓約書に基づき、2週間以内に指定国に滞在していたかどうかを確認した。滞在していた場合、入国から10日間、国指定の宿泊施設での待機を求める。検疫官の一人は「変異ウイルスを食い止めるため、どこに滞在していたかをより注意深く聞くようにしている」と語った。
各空港では、到着客へのウイルス検査もこれまで通り実施。数時間で結果が判明する「抗原検査」を行い、陰性の場合でも、ウイルスを特徴づけるたんぱく質(抗原)の量が陽性となる基準に近い場合はPCR検査をして、感染の有無を厳密に調べる。