ついに「日大のドン」が司直の手に落ちた。
日本大学理事長の田中英寿容疑者(74)が29日、所得税約5300万円を脱税したとして、所得税法違反の疑いで東京地検特捜部に逮捕された。
すでに日大板橋病院を巡る背任罪で起訴された田中の側近で元理事の井ノ口忠男(64)と、医療法人「錦秀会」の前理事長、籔本雅巳(61)の両被告から1億円超の現金を受け取り、税務申告していなかった疑いが持たれている。
「理事長が受け取ったとされる金は、板橋病院の設計業者選定の謝礼と、昨年の理事長再任や誕生日の祝い金です。これまで2度の家宅捜索で、理事長の自宅から現金2億円超が見つかっています。その際、理事長の妻の優子さんが係官に『私の金よ』と激高し、『(自身が経営する)ちゃんこ屋の売り上げと夫婦で稼いだ個人的な財産だ』と主張していた」(捜査事情通)
田中理事長も特捜部の調べに、「現金は受け取っていない」と容疑を否認。これに対し特捜部は、籔本被告が秘書に出金を指示したLINEのやりとりや銀行の出金記録、井ノ口被告と籔本被告の供述から立証できると判断。今後の調べで余罪が見つかり、脱税額が増える可能性もある。
精神的に耐えられる体力が残っているのか
脱税での逮捕は、背任事件への突破口との見方もある。
「これまでは任意の聴取でしたが、逮捕したことで本格的な取り調べが始まります。警察と違って特捜部に逮捕されると東京拘置所で全裸にさせられ、肛門まで調べられます。これはかなりの屈辱です。ひれ伏して泣きじゃくる被疑者もいる。朝から夕方まで何度も同じことを聞かれ、ひとつでもつじつまが合わないと、検事からガンガン責められます。何でそこまで言われないといけないんだと感じるほど。それでも誰も助けてくれません。それで口を割ってしまうのです。特捜部は背任事件への関与についても、当然、聞くはずです」(地検関係者)
13年にわたって日大トップの座に君臨してきた田中理事長。絶対的な権力を握っていただけに、特捜部の厳しい取り調べに耐えられないのではという指摘もある。
「常に周囲からチヤホヤされていたから、特捜部の調べは、相当キツク感じるはずです。ああ見えて、気が小さいという話も聞きます。頭が上がらないといわれる奥さんの関与まで疑われたら、つい話してしまうかもしれません。理事長に絶対服従だった井ノ口でさえ全面自供し、理事長が逮捕されるきっかけになった。理事長の場合、高齢ですし、長期にわたって日大病院に入院するなど健康面で不安を抱えています。精神的に耐えられる体力は残っていないかもしれません」(日大関係者)
長年にわたり東京地検特捜部が執念を燃やしてきた、国内最大のマンモス校を巡る不透明な金の流れがようやく明らかになりそうだ。