日本最大級の大学を運営する執行部の金銭を巡る乱脈ぶりにはあきれるしかない。組織の問題点を検証し、体制を立て直すことが急務である。
日本大学の田中英寿理事長が東京地検特捜部に所得税法違反容疑で逮捕された。付属病院を巡る背任事件で逮捕・起訴された医療法人前理事長らから受け取った現金を税務申告せず、計約5300万円を脱税した疑いだ。
田中理事長はこれまでの調べに対し、現金の受領を否定しているとされる。ただ、特捜部は理事長宅に1億円以上の現金があることを確認しており、ほかにも関係業者らから多額のリベートを受け取った可能性が浮上している。
現金がどういう趣旨で渡されたのか、徹底解明してほしい。
背任事件では、病院の建て替え計画や医療機器の調達に絡み、計約4億2000万円の損害を日大に与えたとして、元日大理事も逮捕・起訴されている。
元理事は、背任事件の舞台となった日大の関連会社「日本大学事業部」の取締役を務めていた。医療機器の調達に反対した病院関係者に、元理事が「理事長からOKをもらっている」と言って、はねつけたこともあったという。
13年間にわたって日大に君臨してきた田中理事長や、その最側近と指摘される元理事が、大学を私物化していたのではないか。
日大は約7万人の学生が在籍し、100万人を超すOB・OGを社会に送り出してきた。なぜこんな事件が起きるのかと憤っている人も少なくないだろう。
それなのに、田中理事長は一連の事件について、公の場で一切説明していない。経営トップとして、あまりに無責任だ。
日大の、組織としての対応にも問題がある。背任事件では、大学が元理事らによって金銭的な被害を受けた形になっているにもかかわらず、被害届の提出を保留するとも発表した。
記者会見を開いて説明することもない。身内でかばい合っているように見える。
日大には、付属の高校や中学も多い。受験シーズンを目前に控え、不安を抱く親子もいよう。
文部科学省は徹底した調査を行い、説明責任を果たすよう日大側に求めた。当然の措置である。
日大には昨年度、約90億円の私学助成金が交付され、税制上の優遇措置も受けている。公共性の高い教育機関として、体制や経営の透明化を図らなければ社会の不信は拭えないと自覚すべきだ。