権限や裁量のない「名ばかり管理職」にもかかわらず管理監督者の扱いを受けて残業代を支払われなかったとして、人気ラーメン店「大勝軒」元店長の20代男性が30日、運営会社を相手取り、未払いの残業代など約1000万円の支払いを求める訴訟を東京地裁に起こした。スタンガンを使ったパワーハラスメントの被害にも遭ったとしている。
訴状などによると、男性は「大勝軒TOKYO」(東京都豊島区、田内川真介社長)の運営する店舗で2015年2月からアルバイト、18年3月から正社員として、21年1月の退職まで連日、約13時間にわたり働いた。毎月140~160時間に及ぶ残業の対価を得られず、未払いの残業代は約500万円としている。
また18年9月ごろ、田内川社長が従業員に、スタンガンを顔にあててスイッチを押すよう命じる場面に居合わせ、「お前もやれ」と強制された。従業員がスタンガンでパワハラを受ける動画を田内川社長から送られ、恐怖を感じた。
男性は退職後に労働組合に加入し、運営会社との団体交渉で残業代の支払いなどを求めたが、管理監督者にあたるとして拒まれたという。男性の代理人は「出退勤の自由があるわけでも、重要な事項の決定権があるわけでもなく、違法な『名ばかり管理職』に他ならない」と指摘。男性は「日常的な暴力や長時間労働にさらされ、これが普通かと思うようになる。こんな働き方があってはならない」と訴えた。
大勝軒TOKYOは「事情を知っているものがおらず、コメントできない」と話している。【東海林智】