2004年11月に奈良市立富雄北小1年だった有山楓さん(当時7歳)が誘拐・殺害された事件で、楓さんの父親(47)が5日、同市内で講演し、「頑張り屋で優しい娘を一瞬にして奪われた。今でも苦しい気持ちになるが、楓が生きていたことを覚えていてほしい」と訴えた。遺族は毎年心情をつづった手記を出しているが、公の場で事件について話すのは初めて。
父親が講演したのは、「犯罪被害者支援 奈良県民のつどい」(県など主催)。県警から依頼され、「事件を風化させたくない」との思いから応じた。「かけがえのない命 楓と過ごした7年の日々」と題して約1時間半語り、参加した約130人が耳を傾けた。
父親は楓さんについて、「ダンスやブランコなど体を動かすことが大好きな妹思いの子だった」と紹介。事件当日の朝も礼儀正しく「行ってきます」とメールをくれたといい、「幸せな日々がずっと続くと思っていた。記憶の中の楓は成長しない7歳のままです」と言葉を詰まらせた。
事件が起きたのは、家族で7歳の誕生日を祝った3日後。下校中に行方不明になった楓さんは奈良県平群町の道路側溝で遺体で見つかり、小林薫元死刑囚がその後に逮捕された。
父親は公判などで極刑を訴え、13年に刑が執行された。当時の思いについて「(死刑を望んだ)自分も『殺人犯』ではないかという思いにも駆られた」と振り返り、葛藤したことを吐露した。
また、事件直後の被害者報道についても言及。「フラッシュの光やヘリの音が忘れられない。そっとしておいてほしい気持ちが強かった」と理解を求めた。
父親は講演で防犯活動の重要性も訴え、「楓もきっと子供たちの見守り活動に動き回っていると思う。同じような事件が二度と起きてほしくない」と訴えた。 【林みづき】