「子どもの居場所作りたい」準備を加速 中3刺殺事件受け 愛知・弥富

愛知県弥富市の中学生刺殺事件は、地域コミュニティーのあり方に一石を投じる形となった。市内で子ども食堂などの活動を展開している同県蟹江町のボランティア団体「ONiGiRi(おにぎり)」代表の加藤裕子さん(42)は、地域の中での子どもたちの居場所作りの必要性を感じ、準備を進めていたところに事件が発生。常設の拠点施設設置に向けた動きを加速させている。
事件は11月24日、中学3年の男子生徒(14)が同学年の少年(14)に腹部を刺され死亡した。子どもたちが同じ保育園や小中学校で過ごす狭いコミュニティーの中で事件は起きた。殺人容疑で送検された少年は県警の調べに「嫌なことが重なって自暴自棄になった」との趣旨の供述をしており、県警は動機の解明を慎重に進めている。
「もっと自分に何かできたことがあったんじゃないか」。3人の子どもの母親でもある加藤さんは事件後、そんな後悔の気持ちを抱き続けてきた。おにぎりは2018年夏に発足し、弥富市に隣接する蟹江町内で子ども食堂を始めた。弥富市でも19年秋から取り組みを始め、事件の起きた地域でも催しを開いていた。メンバーは子育て中の母親たちが中心だが、中学生ら子どもたちもボランティアとして参加している。
一人でぽつんといる子や、遊んでいてもすぐに泣き出す子など、気になる子どもには冗談を言いながら声をかけたり、時には抱っこやおんぶをして触れ合ったりと、積極的に関わってきた。「親には話せないんだけど」と悩みを打ち明ける子や、「家に居場所がない」と話す子らの気持ちに寄り添い、向き合ってきた。
コロナ禍でも、フードバンクから提供のあった食品などを子育て家庭に無料配布し、弁当を作って配達するなど活動を続けている。弥富市が協賛する活動は、市内全小中学校の児童生徒にチラシが配布され、地域住民の他に市職員や教員も意欲的に関わってくれているという。
週2回ほどだった弁当配布は、事件後は「おにぎりの存在を知るきっかけになれば」と毎日のように実施している。希望者を募る際に、「悩みがあればぶつけて」「できる限りのサポートをしたい」などとSNS(ネット交流サービス)でメッセージを送ると、「いつも助けてもらっていて、ありがたい」と感謝の言葉や、事件へのやり場のない悲しみなどが寄せられている。
これまでの活動は公民館などを借りて開催してきたが、加藤さんが目指すのは、子どもたちが週に何度か集まり、気軽に相談したりごはんを食べたりできる拠点施設だ。事件前から弥富市や蟹江町に設置する計画を立てていたが、事件を受け、早期開設に向けて物件購入のためのクラウドファンディングを近く実施することを決めた。加藤さんは「地域の中で誰か見守ってくれる存在は必要。おにぎりが居場所の一つになれたら」と、おにぎりの活動に協力してくれる人も募っている。問い合わせは、メール([email protected])。【加藤沙波】