スッポンの「交通事故死」相次ぐ…地元住民も「なんでこがんとこに」

長崎県諫早市でスッポンが車にはねられるケースが多発している。県内の県道で、今年度上半期に回収された死骸は10匹で、そのすべてが諫早市。九州・沖縄の他県では0~2匹にとどまっている。「諫早市は水田や用水路が多く、生息に適している」、「養殖場から鳥が運んでいる」――。確たる理由は不明だが、専門家や地元住民からは様々な予想が飛び交い、謎が深まっている。(丸山一樹)
「なんでこがんとこにスッポンが……。気付いた時には遅かったわ」
同市の女性(50歳代)は4年前、車で市街地を走行中、スッポンをひいてしまった。その後も市内の観光地周辺で複数回、目撃した。同市では農業地帯だけではなく、市役所などが立地する市街地の用水路などでもスッポンの目撃情報が相次いでいる。
同市内の県道で車などにひかれて回収されたスッポンの死骸は、2019年度13匹、昨年度21匹、今年度は9月末現在で10匹に上る。県によると、同市以外でスッポンの回収例はほとんどなく、今年度に限っては諫早市のみだ。九州・沖縄各県で今年度回収された死骸は、福岡県で1匹、沖縄県で2匹、ほかの県はゼロだ。
なぜ、諫早市でスッポンの出没が相次いでいるのか。県生物学会会長で両生・

爬虫
(はちゅう) 類に詳しい長崎女子短期大学の松尾公則教授(70)の調べでは、市内を流れる本明川や農業用水路で多数確認されており、「水が豊かで、流れが緩やかな水路も多い。そうした生息に適した環境下で繁殖しているのではないか」とみる。ただ、スッポンは警戒心が強くて観察が難しいため、その生態は謎な部分も多いという。
一方、県内に点在する養殖場のスッポンを野鳥がつかんで飛び立つケースがあると明かすのは、養殖スッポンに詳しい業界関係者。「鳥につつかれた痕があるスッポンが目撃されている。カラスやトンビに運ばれたスッポンが空中でもがき、水田や水路に落下するケースがあるかもしれない」と話す。
国土交通省によると、国が管理する国道での動物死骸処理件数は約7万件(2019年度)で、犬・猫(33%)、タヌキ(26%)、鳥類(11%)、シカ(7%)などが目立つ。担当者は「スッポンに関するデータはないが、多くはないと考えられる」としている。
諫早市などを管轄する県県央振興局は「特に回収されるのが多いのは農業地帯。ハンドル操作を誤らないよう、近くを車で走行する際には注意してほしい」と呼びかけている。
市章や伝説、亀と深い縁

諫早市に生息するニホンスッポンはカメ目スッポン科に分類される。同市と亀は実は縁深い。同市が2005年に周辺自治体と合併する以前の市章は、亀3匹をかたどっていた。文明6年(1474年)頃に山の上に築かれた高城が「亀城」と呼ばれたことに由来する。城が攻められた際、本明川に潜む「大亀」が城の下に潜り込み、山ごと持ち上げて敵を退散させたと伝わる。
ほかにも同市内には、亀の像やレリーフが設置されていたり、亀が「神の使い」として登場する伝説も残っていたりする。
同市美術・歴史館の大島大輔専門員は言う。「この地では、亀は身近で愛された存在だったと想像できる。切っても切れない関係です」