政府が新型コロナウイルスの経済対策として実施する18歳以下の子供に対する10万円相当の給付をめぐり、全額を現金給付とするか、政府方針通り5万円分をクーポンとするかで自治体が揺れている。大阪市長がいち早く全額を現金給付とする意向を示すと、兵庫や静岡、山梨など各地の自治体が全額を現金給付とする方針を表明した。岸田文雄首相は自治体の判断で現金でも対応可能とするが、明確な基準は示されず、自治体からは批判や注文が相次いでいる。
大阪市長、不快感
「クーポンが良いですっていう人おるん? クーポンの方がいいと思う人は手を挙げて」。大阪市の松井一郎市長(日本維新の会代表)は9日の記者会見で、出席した記者らに〝逆質問〟し、政府の経済対策がニーズに合致していないと強調した。
政府は年内に5万円の給付を開始し、来春の入学シーズンなどに合わせて5万円相当のクーポンを発行したいとする。ただ、松井氏は「クーポンは準備に膨大な時間やコストがかかり、現実的ではない」と政府に見直しを強く求めた。
松野博一官房長官は7日の会見で「自治体の実情に応じて現金給付も可能とする」と述べ、松井氏は市の貯金にあたる財政調整基金で立て替えて全額現金方式とする意向を表明。中学生以下にはすでに児童手当を給付する仕組みがあるため、申請不要の「プッシュ型」で今月27日に一括で給付するとした。
ところが松野氏は8日、同時支給は想定外と発言。松井氏はこの日、全額現金給付の場合は国からクーポン相当分の財源措置をしない可能性を示唆されたと明かし、「だめならだめと言ってもらわないと」と不快感をあらわにした。
政府は9日、今年度補正予算案の成立後に全額現金給付をするための基準を示す意向を示した。これを受けて大阪市は年内の一括現金給付を断念し、クーポン分を除く5万円の給付を先行して年内に行う。ただ、残り5万円を現金給付する意向は変えていない。
「基準を示して」
全額を現金給付と決定する動きは各地に広がり、他の自治体も状況を注視する。大阪府岸和田市の永野耕平市長は9日、会員制交流サイト(SNS)のツイッターで「早急に国が認めてくだされば、年内に10万円の一括振込ができます」などと書き込んだが、政府の意向を受けて断念した。同市子ども家庭課は「全額現金給付がどのような条件で可能なのか、国が早く示してほしい」と訴えた。
堺市は「クーポン発行のためのシステム構築や印刷を発注する業者が限られ、(近隣自治体との)取り合いになりかねない。市民の手に届くのが遅れる」と懸念。同市の永藤英機市長はツイッターで「曖昧な方向性で自治体を振り回すのは止めていただきたい」と政府を批判した。
政府が自治体の判断で現金でも対応可能とした点について、奈良県天理市の並河健市長は9日、SNSのフェイスブックで「これまで政府が(クーポン配布と)判断したと理解し、準備を進めてきた。今になって自治体に判断が投げられるとすれば、無理な責任転換だ」と批判。「選べるのであれば本市も全額現金を選ぶ」とした上で、「解釈の幅があるあいまいな状態ではなく、政府の考える最適解を早急かつ具体的に示してほしい」と要望した。
給付対象となる家庭も注目している。シングルマザーとして中学1年の長男(13)を育てる大阪市の会社員、西崎麻衣さん(37)は「冬休みには冬期講習があり、給付があれば金額を気にせず通わせられる」と現金での一括給付に期待を寄せた。一方で、「地域を問わず生活困窮者はいる。自治体によって給付方法が違うのは不公平では」と疑問を投げかけた。4歳と2歳の子供を育てる大阪府寝屋川市の男性会社員(33)も「事務手続きに税金が使われるのはもったいない。クーポンの使用方法も示されていない」として現金一括での給付を要望し、「住む場所によって方針が違うのは残念だ」と述べた。