「台湾独立=戦争。はっきり言っておく!中国には妥協の余地ゼロ!!!」(2021年10月28日)
「ハエがウンコに飛びつこうとする西側子分政治家」(同11月21日)
「過激な反中マインドに駆られているこのマスゴミが益々発狂!!!」(同11月13日)
……中国駐大阪総領事の薛剣(シュエジエン)( @xuejianosaka )は、連日ツイッターにこうした激烈な表現で中国礼賛&日米攻撃のツイートを投稿し、ネット界では有名な存在となっている。
その薛剣総領事が「文藝春秋」に登場し、過激なツイートを連発する心の内を明かした。
薛剣総領事が一躍有名になったのは今年8月。
「20年かかって、アメリカはアフガンでこんな『成果』を挙げた」
というツイートとともに、アメリカの飛行機が上空から人間をばら撒くイラストを投稿したのだ。米軍がアフガニスタンから撤退する際、亡命を希望する多くの現地住民が飛行機にしがみつき、死者も出たとされる。それを揶揄したツイートだが、あまりに不謹慎だと、非難の声が上がった。
だが、薛剣総領事の投稿はおとなしくなるどころかますます過激さを増した。10月、中国当局による人権弾圧が続く香港で、国際人権団体アムネスティが撤退することが報じられると、薛剣総領事はこんなツイートをしたのだ。
「害虫駆除!!!快適性が最高の出来事また一つ」
現役の総領事が人権団体を「害虫」と呼んだことは国内外の猛烈な非難を招いた。
しかし、それでも薛剣総領事の暴走はおさまらない。
「平和解放前のチベット最大の農奴主」(11月10日付。ノーベル平和賞受賞者のダライ・ラマ14世について)
「人権カルトの振舞い方としか言い様がない!」(11月19日付。バイデン米大統領が北京冬季五輪のボイコットを匂わせたことについて)
先に紹介した「ハエがウンコに飛びつこうとする西側子分政治家」とは、同じく五輪ボイコットに言及した国民民主党の玉木雄一郎代表のことを指している。
こうしたツイートを1日に80件近く、ときには早朝や夜中まで続けているのである。
「媚びる外交はしない」
いったい何を目的としてこのような情報発信を続けているのか? 本誌は薛剣総領事にインタビューした。
薛剣 「(日本のメディアは)新聞もテレビも反中報道が充満しています。ウェブ空間でも、反中情報ばかり発信している。こうした環境に置かれた日本の皆さんが、中国について良い感情をもつはずがない。
日本のメディアはあまりに中国を知りません。どんどん変化している中国を伝えていません。結果、本当の情報は遮断され、改変されている。日本国民の正確な中国理解が妨げられています。
偏った中国理解は両国のために決して良いことではない。日本における公正で客観的な対中報道は、中国政府としても、私たち個々の外交官としても望んでいます。いわゆる民意は、突き詰めて言えば『作られるもの』です。悪く作ることもできる反面、いい方向へリードしていくことも、本来はできるはずだと思います」
――だが、アフガニスタンに関連するツイートでは、不愉快な印象をもつ人が多くいたと思うが?
薛剣 「中国を理解してもらうため、笑顔ばかりを見せるという考えではない。さらに言えば、媚びる外交はしない。中国はこの問題をこう見ている。人々がこういう感情を抱いている。そうした面を、ありのままに伝えることも重要なのです」
――「ありのまま」の中国の感覚では、米軍機から爆弾のかわりに人間が落ちるのは面白いのでしょうか。
薛剣 「いや、面白がったわけではありません。アメリカが覇権国家としてどれだけ他国に害を及ぼしているか。その一面をぜひ、日本の皆さんに直視してほしいという思いからです。アメリカの良い面だけではなく、現実にやったことを見てほしい。むしろ、日本にはそうした情報が極端なほど欠如しています。アメリカをバラ色の国のように考え、その価値観で中国を見ている。健全な姿ではないと思います」
世界で暴れる「戦狼外交官」
近年の中国を象徴する「戦狼(せんろう)外交」という言葉がある。中国の外交官が民主主義陣営の国に対して挑発的・攻撃的な言動を繰り返す現象のことで、米中対立の深刻化とともに目立ちはじめた。
「中華民族の偉大なる復興」を掲げる習近平のもと、外交官たちは政権に忖度し、ことさら教条主義的かつ高圧的な姿勢を示すようになった。
戦狼外交は、中国発のコロナ禍が全世界に広がり、新疆(しんきょう)ウイグル自治区や香港の人権問題に国際的な非難が強まった2020年から加速。同年3月には中国外交部の趙立堅報道官が、「新型コロナの起源はアメリカにある」と主張して米政府高官を激怒させた。
他にも外交部次官補の華春瑩、前駐英大使の劉暁明らが「戦狼外交官」として知られる。
薛剣総領事は、日本における戦狼外交官の筆頭と言えそうだ。
だが、もともと薛剣総領事は明るく付き合いの良い人柄で知られており、「知日派」「開明派」とみられていた。そんな彼がなぜ戦狼外交官に転じたのか?
その謎に迫った安田峰俊氏のレポートと 薛剣総領事のインタビュー は、「文藝春秋」1月号(12月10日発売)に掲載されている。
(「文藝春秋」編集部/文藝春秋 2022年1月号)