大手うどんチェーン「丸亀製麺」などを運営するトリドールホールディングス(HD)は、本社移転に伴って新しくデザインしたオフィスを公開した。オフィスには、オランダ発の自由度が高い働き方である「ABW(アクティビティー・ベースド・ワーキング)」の考え方を導入。先進的な働き方の実践を目指す。
本社を渋谷に移転
トリドールHDの本社は神戸市にあったが、9月1日にオフィスビル「渋谷ソラスタ」(東京都渋谷区)に移転した。新オフィスは同ビルの19階と20階にあり、約350人が働いている。執務スペース、社員食堂、来訪者との打ち合わせスペースなどがある。
新オフィスの設計を手掛けたのはインテリアデザイナーの山下泰樹氏。いくつものオフィスデザインを手掛けてきた山下氏は、「時間や場所にとらわれず、仕事内容に合わせて働く場所を自由に選べるのが真のABWだ」と解説する。日本企業では、オープンなスペースにして、自分のデスクを固定化しないフリーアドレスが普及しつつあるが、それをさらに進化させたのがABWのようだ。
実際にトリドールHDの社内を歩いてみた。「普通のオフィスっぽくない」という印象を抱いたのは、一般的なオフィス家具がほとんどないからだ。おしゃれなテーブルや椅子がたくさんあり、先進的なIT企業のようだ。
入口から部屋の奥まで見通すことができるのは、最近増えている“オープンさ”を重視したレイアウトと共通している。山下氏は、日本で普及しているABWの多くは、間仕切りを取り払った空間に、多様な家具を置いて満足している傾向にあると分析している。そこで、新オフィスには、広い空間にあえて会議室や柱といった障壁となるものを設けることで、適度なプライバシー空間をつくり、落ち着いて会話や作業ができる環境を整えた。オープンにすることでアイデア出しや知識共有といった作業をしやすくしつつ、集中したい人に向けた配慮をしている。
オフィス内には、靴を脱いでリラックスできる「寝っ転びスペース」や、ファミレスのボックス席のようなスペースもある。気分に応じて、違うテーブルや椅子で作業できるようになっている。ロッカー室があるので、私物などはそこに入れる。
昼寝ができる「シエスタルーム」もある。部屋の中は薄暗くなっており、3つの半個室がある。半個室の入口はカーテンで仕切ることが可能で、中には簡易ベッドのようなものが置いてある。取材時、1つのベッドで社員が横になっていた。ちなみに、トリドールHDの幹部によると、15分程度の短い昼寝ならば、就業時間中に行っても問題ないという。
意識が高い人に来てほしい
なぜ、トリドールHDはこのような新オフィスの設計をしたのか。粟田貴也社長は「外食産業は働く場として敬遠されがちだった。そのイメージを払拭(ふっしょく)したい」と語った。
人口減少社会を迎え、外食チェーンを巡る環境は厳しさを増している。また、コンビニなどが中食分野を強化しつつあり、脅威になっている。トリドールHDは新しい成長の場を海外に求めており、2025年度までに世界6000店舗体制の実現を目指している。例えば、米国ファンドと資本提携して丸亀製麺ブランドの拡大とグローバル化を推進しようとしている。世界を舞台に活躍できる人材をそろえるため、新オフィスを思い切って変更する決断をしたようだ。
なお、新オフィスには、音楽、アート作品、教養を高める本などに触れる場も設けられている。社員の感性を鍛えて、新ビジネスを生み出してほしいという思いが込められている。粟田社長は「意識の高い人を集めたい」と話した。
新オフィスに魂を入れるプロジェクトも続々
オフィスが新しくなっても、そこで働いている社員の意識や、人事制度が“旧態依然”としたままでは意味がない。そこで、トリドールHDでは、マネジャーや社長候補者だけでなく、店舗でうどん職人や天ぷら職人としての道を極めたい社員向けのキャリアパスなども強化するという。また、新規事業などを社内で立ち上げたい人のためのプレゼンイベントも開催する予定だ。
新オフィスをきっかけとして、社員の意識を高め、外部の人材を引き寄せることができるだろうか。