硫酸事件被害男性「人と関わるのが不安」 痛む傷口、視力不安定

8月に東京メトロ南北線白金高輪駅(東京都港区)で硫酸をかけたとして警視庁に逮捕された大学生の花森弘卓(ひろたか)容疑者(25)=静岡市=が17日、東京地検に傷害罪で起訴された。被害に遭った会社員の男性(22)が同日、毎日新聞の取材に応じ、「硫酸をかけるに至るまで彼の心の中で何があったのか、裁判で明らかにしてほしい」などと心境を語った。
男性は事件で顔や肩、胸などに重度のやけどを負った。医師からは「完全に治すには皮膚移植の手術が必要」と言われており、視力も不安定で遠くが見えづらい。
事件直後の入院費として約50万円がかかったほか、今も通院のための治療費や交通費で毎月約5万円がかかる。しかし、受け取ったのは東京都からの見舞金の10万円だけ。体温が上がったり、少しの刺激を与えたりするだけで傷口が痛むという。
事件前は不動産会社の営業職として、やりがいを感じながら働いていた。今も上司や同僚から復帰を求められているが、「人と関わることで同じようなトラブルに巻き込まれないか不安がある。同じ思いを二度と味わいたくないので、極力人と関わらない仕事ができないかと考えている」と打ち明ける。「(花森被告に)職場も特定されており、戻るのはリスクが高い」とも語った。
傷害罪という罪名で起訴されたことに違和感もある。「確かに現行法では仕方ないかもしれないが、自分の人生も傷つけられたので、その程度かという思いもある。数年後に刑務所から出てくる可能性もあると考えると怖い」
男性は花森被告が以前通っていた琉球大(沖縄県)の後輩で、同じ映画サークルに所属していた。昨年9月に無料通信アプリ「LINE(ライン)」で連絡があった花森被告から「敬語を使え」などと言われ、連絡を絶つなどしたことから、一方的に恨みを抱かれたとみられる。
東京地検などによると、花森被告は8月24日午後9時5分ごろ、白金高輪駅の地下2階から地下1階に向かう上りエスカレーターに乗っていた男性に対し、追い抜きざまに硫酸をかけ、両目の角膜損傷のほか、顔や肩のやけどなど重傷を負わせたとされる。今月10日までの3カ月間に実施された鑑定留置で責任能力が認められた。【宮城裕也】