説明なく成田→関空 「本末転倒では」 水際対策に帰国者ら困惑

新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」を巡り、政府は外国人の新規入国停止といった水際対策を取り、日本人帰国者にも渡航先に応じて隔離施設や自宅での14日間待機などを求めている。こうした中、海外で過ごす日本人らは難しい対応を迫られている。
12日昼、成田空港。「皆さんには関西空港に移動していただきます」。ヘルシンキからの帰国便に搭乗していた乗客を集め、空港関連職員が告げた。成田近辺にある検疫所の宿泊施設が満室になったためという。「なぜ関西なのか」。困惑の声が相次いでも、職員は「決定事項ですので」。それ以上の説明はなかった。
乗客の一人、男性(34)は留学先のスウェーデンからヘルシンキ経由で帰国した。成田到着から約9時間後、他の帰国便の客と合流し、航空機で関空へ。大阪の宿泊施設に到着したのは午後11時ごろで、出発から約26時間が過ぎていた。施設で6日間隔離の後、18日のPCR検査で陰性だったため、8日間の自宅隔離に入った。男性は「移動する間に、帰国者間だけでなく外部との接触のリスクも高まるのでは。本末転倒だ」と語る。
強化された水際対策を踏まえて、帰国を断念した人も。米国・ニューヨークにある日系企業の男性駐在員(37)は妻、3人の娘と帰国する計画を断念した。2018年に渡米後、一度も帰国しておらず、久々に帰省するつもりだった。そんな中で打ち出された水際対策の強化。同じ航空機にオミクロン株感染者がいた場合はどうなるのか。「帰国できても家族とホテルで缶詰めになるだけというのは現実的ではない」と男性。状況を考えれば、断念せざるを得なかったという。
日本政府は、外国人に発給した一部の査証(ビザ)についても、その効力を一時停止した。ドイツ在住の音楽家の女性(32)は、一緒に日本入りするつもりだったドイツ人の夫(30)の短期滞在ビザの効力が停止され、帰国を断念した。高齢の祖父母に、8月に生まれたばかりの長女を見せてあげたいと、年末年始の帰国を予定していた。女性は日本政府の対応に「オミクロン株に感染しているリスクは帰国する日本人にもあり、なぜ国籍だけで入国を拒否するのか。科学的で一貫した感染対策を徹底すべきだ」と指摘する。
まもなく受験シーズンに入る日本。企業勤めの夫の赴任先の英国・ロンドンで暮らす40代女性は、中学3年の長男が東京都立高校の受験を控えているため、12月中に母子で帰国する。帰国を前に「これからのことは運任せなところもあり、不安しかない」と話す。
日本人学校に在籍する長男は、ロンドンでも塾に通って受験に備えてきた。帰国後も、ホテルや自宅での待機期間が明けてから塾の冬期講習などに参加し、最後の追い込みをかける。英国ではオミクロン株の感染が拡大しており、同じ飛行機で感染者が出て濃厚接触者となれば、慣れない宿泊施設で14日間も過ごさねばならない。「無事に受験本番を迎えられるのか」と焦りは募る。簡易キットで週2回のコロナ検査を受けるなど注意を払ってきたといい、「受験生を抱え、やむを得ずの帰国であることを理解してほしい」と語る。
トルコの「イスタンブル日本人学校」では、小中学部の計6人が受験や編入試験のため11月下旬~12月初旬に帰国した。待機期間を見据え、保護者らは試験まで余裕を持って行動できるように予定を組んだ。学校側もコロナの影響で郵便事情が不安定になっているため、志望校に出す複数校分の調査書や推薦書をまとめて子どもに手渡した上で日本へ送り出した。
帰国後、子どもたちはオンラインで入試に向けた面接指導や授業を継続して受け、教員に元気な姿を見せているという。亀井博之教頭は「異文化の中で多様な経験をした子どもたちは、進学先でも周囲にきっといい影響を与えてくれるはずだ。試験当日まで、頑張ってほしい」と話している。【田中理知、千脇康平、秋丸生帆】