岸田文雄首相は22日、東京都内で講演し、新たな外交方針として「新時代リアリズム外交」を掲げた。自身が会長を務める「宏池会」の流れをくむ外交というが、名前を挙げた2人の元首相が「中国」と深い関係を持つ人物なのだ。同盟・友好国が、中国の人権弾圧に厳しい姿勢を見せるなか、いらぬ誤解を生まないのか。識者に聞いた。
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「宏池会は昔からリアリズムの外交を掲げてきた」「これを受け継ぎながら主体的な外交を進めていきたい」
岸田首相は講演でこう語り、新外交の柱として「普遍的な価値」「地球規模課題」「国民の命や暮らしを守る」という3つを据えた。
普遍的価値としては「自由で開かれたインド太平洋」の実現や人権問題を例示。地球規模課題では気候変動問題を挙げた。国民を守る点では、国家安全保障戦略の改定などに取り組むとした。
常識的な外交方針にも感じるが、宏池会外交を紹介する際に名前を挙げたのが、大平正芳、宮沢喜一両元首相だった。
大平氏は1972年に外相として「日中国交正常化」をとりまとめ、宮沢氏は92年に「天皇陛下の訪中」を実現させた人物である。どうしても、「中国重視」という印象が拭えない。
中国当局による新疆ウイグル自治区での人権弾圧を受けて、米国や英国などが北京冬季五輪に政府代表を派遣しない「外交的ボイコット」を表明するなか、岸田首相は決断を先送りにしている。
これでは、国内外で誤解を受けないか。
国際政治に詳しい福井県立大学の島田洋一教授は「宮沢内閣は『中韓にすり寄った外交』を行った印象がある。現在の中国とも共存の道を探るのが岸田首相の外交方針であれば問題だ」と懸念を示した。
評論家の八幡和郎氏は「岸田首相が掲げた『新時代リアリズム外交』が、建前にとらわれず、実質的な成果を追求するという姿勢ならば正しい。ただ、宮沢内閣下では慰安婦の強制連行を認めた『河野談話』の印象が強い。誤解を招かないためには、言葉だけではない説明が求められる」と指摘した。