疑惑の“車いす市議”は“歩ける動画”を「相当古いもん、違うんかな」 その後発覚した“不都合な真実”とは《直撃スクープ》 から続く
芦屋市の“車いす議員”長谷基弘氏(63)。2021年11月、市議会で「立って歩くのを見た」と発言した公明党の徳田直彦市議に対して、名誉棄損容疑で異例の刑事告訴に踏み切った。
一方、地元では長谷市議が「歩くのを見た」という目撃談が複数上がっているのも事実だ。取材では「この目で見た」という直接の目撃者に、当時の様子について話を聞いてもいる。
そのほかにも路上に車を停めて、松葉づえをつかずに自動販売機で飲料水を購入する動画が流出。歩行の可否をめぐり、「政治的なパフォーマンスではないか」といった様々な憶測が飛び交っているのだ。
そこで長谷市議に 動画 を見せながら真偽について問うと、「その動画は相当古いもん、違うんかな、と思うんですよね。随分前の話やろうなって思うんですけど」「ここまでひどくなったのは選挙が終わった頃やから3年ぐらい前」などと、現在は動画のように歩行することは不可能だと主張した。
しかしながら、その後に取材できた撮影者によると、動画の撮影時期は「2021年11月10日」だという。動画内の長谷市議の傍を走り去るバイクのナンバーから、車両の登録日を照合したところ、令和2年9月3日と判明したため、少なくともここ1年ほどに撮影されたものであることは間違いない。
真実はどこにあるのだろうか――。取材班は再度、11月30日に市議会から車いすで帰宅する長谷市議に再度、話を聞きに行った。(全4回の3回め。 # 1 、 #2 、#4)
「何か掴んでいないと、片足あがらない」
――長谷さん、文春オンラインです。徳田議員への刑事告訴の件なんですが、こちらの動画を見てください。
「うんうん……まあまあ装具しているわなあ。このぐらいの距離やったら、頑張ってるんやろな……痛そうやけど」
――この動画ぐらい歩けていたのはいつぐらいでしょうか。直近3年ぐらいは厳しいという話でしたが。
「厳しいですよね」
――この動画の撮影日がわかりまして、この前の11月10日です。
「……10日。11月10日……(スマホでカレンダーを見る)」
――場所も西宮市の路上とわかりまして。
「11月10日……病院に行っている日だよね? 杖ついて行っていると思いますよ?」
――この動画だと何も掴まらずに歩けていますが。
「じゃあ歩けてるやないかと? 今の状態見てもらったらわかるように、頑張れば、これぐらいやったら、車の周りならいけんことはないかもしれませんね。何か掴んでいないと、片足あがらないと思いますよ?」
「薬は近年使っていない」→「薬は飲みますよ」
――YouTubeにアップされている動画と、今ご覧になっていただいたような歩く動画とのイメージの乖離が、「歩ける」という評価に繋がったのではと思うのですが。
「はっはっは……。もうそれを言われちゃうと、私の身体障がい者としての……なんていうかな。私、車いすがなければ生活できませんからね。だからその、言ってる意味が理解できないんやけど、例えば10メートル歩けたら車いす使っちゃだめなの、ということになるじゃないですか。それがすごい嫌なの。けど実際、立ち上がりとか大変ですから。ひょっとしたらトラムセットが効いてたのかもしれないし」
――最近は副作用の強い薬は飲まれていないとお手紙にありました。
「薬は飲みますよ。痛み止めは当然飲まないと、そんなの。薬箱見てもらえばやけど、痛み止めだらけです。あんなのを飲んで、それで痛みを止めているという状況ですかね。きつい薬は飲んでません」
――最近強い薬を飲んでないから、随分前の動画なんじゃないかという話だったと思うのですが。
「僕はそう思います。あんなに、ぱっぱっぱっ、と歩けるんやったら、だいぶ前の動画かなと思ったんやけど」
――でも実際は20日前の動画です。
「病院行く時は車をおいて、杖をついて行っていますから。その動画はないんですか?」
――薬も飲んでらっしゃった?
「うん、あ、いや薬は毎日飲みますよ。強くない薬を、そうですね。うん」
「杖をついたら歩ける」が…?
――毎日薬を飲んでたら、毎日あれぐらいは動けるということですか?
「いやちょっと、難しいね……」
――この日は特別調子がよかったということでしょうか?
「いや、特別調子がいいっていうか、もうそれをせなしゃあない、って時だけやね」
――自動販売機で飲料水を買うのに焦っていたということでしょうか?
「もう、水分が足らないとちょっと困るんで」
――生活上、車いすは必要だと思うんですが、一部でパフォーマンスと言われていることについてどう思いますか。
「心外です。見られました? 私の手術歴とか。すごい長い時間かかって、やっとここまできたって感じなんですね。そのためにすごい努力してきたわけですよ。それはみんなが信じられないぐらい頑張ってきたし、パフォーマンスなんてレベルじゃないです。どうしても偽者の障がい者にしたいわけやな。言ってるじゃないですか、歩けないわけじゃないですって。周りの人は僕が杖ついてるの何人も見てますよ。別に隠しているわけじゃない」
――この前の話だと杖をつかないで動画のように歩くのは、3年前ぐらいから厳しいとのことでしたが。
「ああ、厳しくなってきてますわ、たしかに昔みたいにすっとはいかんわね。ただ距離だって数十メートルなんてとんでもないですよ。たぶんこの動画もこける寸前やと思いますよ。障害で立ち上がれないとか歩けないとか、そういう人たちが使っているのが車いすだと思っているかもしれませんが、実際はそうじゃないですね。私より歩ける人でも、車いすを使っている人もいますし。やっぱり距離の問題ですよね。100メートルいけても、その先行きようがないですからね。その辺を理解してほしいなと思います」
直撃取材の後、長谷氏から記者のもとへSMSが届いた。手紙や直撃取材では、歩けるほど痛みを抑える強い薬については《使った場合は記録してありますが、近年は使ってはいないと思います》などと主張していたが、こう翻した。
《あの日は、脚に負担をかける可能性があったので、ステロイド剤とトラムセットを朝、追加で飲んでいます》(11月30日)
専門医は「歩けないことを誇張している」
こうした長谷氏の言い分と手術歴、歩いている動画について、日本整形外科学会の専門医であるB医師に意見を求めた。B医師は「ご本人の主張やYouTubeにアップされている動画は、歩けないことを誇張しているように見える」と見解を述べた。
「昔の病でステロイド剤を使用し、時を経てその影響で歩行困難になるという病状の経過は十分理解できます。
ただ車から自販機まで歩く動画を見る限りだと、スムースに歩いている印象です。本人がいうように膝の動揺性があれば、装具をつけると膝の動揺性が減ります。ですから、装具を付けていれば動画に撮影されている程度は本来問題なく歩けるのでしょう。トラムセットは毎日服用できる薬なので、彼がいう膝折れが痛みで力入りづらいというものであれば、鎮痛剤で対処可能でしょう。
一方で、長谷氏が車に掴まりながら歩くYouTube動画を見ると、この状態で5メートル歩くことも困難であるように見えます。手術後、ある程度期間が経っているので、急に歩けるようになるとは考えづらい。ですので、すり足で歩いたり車いすで転んで立ち上がれなかったりするYouTube動画には、ある程度の誇張はあるのではと思います」
芦屋市議会で盛り上がった“車いすパフォーマンス疑惑”。刑事告訴については「さすがにやり過ぎ」、「徳田市議は皆が思っていたことをつい声に出してしまっただけ」と擁護の声も上がっている。前代未聞の車いす市議をめぐる騒動は、どう決着を迎えるのだろうか。
【 流出動画はこちら 】
【動画】「車を降りて自らの足で…」芦屋市で流出した“車いす市議”の《実は歩ける動画”》 へ続く
(「文春オンライン」特集班/Webオリジナル(特集班))