「キラーT細胞」に一定効果 オミクロン感染拡大の脅威も 米ファイザー、モデルナ製の「mRNA」めぐり「日本人は免疫活性強い」との報告も

5都府県で市中感染が確認された新型コロナウイルスの新変異株、オミクロン株。ワクチンによる抗体が低下することが最大の脅威だが、ワクチンにはほかにもウイルスを殺す「キラーT細胞」など細胞性免疫の働きもある。専門家はオミクロン株にも一定の効果を発揮するとの見方を示す。
26日には愛知県で海外渡航歴のない40代と10代の親子2人のオミクロン株感染が確認された。市中感染は東京、京都、愛知、大阪、福岡の計5都府県に拡大した。
英国やフランス、イタリアでは感染拡大が止まらず、欧米各国はワクチンの追加接種を急ぐ。日本も高齢者らの追加接種を前倒しする方針だ。
日本で接種されたワクチンは大半が米ファイザー製または米モデルナ製で、いずれもmRNAという種類だ。
ファイザーの暫定的な研究結果によると、オミクロン株に対して同社製の2回接種でも重症化リスクは軽減できるとみられるが、ウイルスが細胞に侵入するのを防ぐ中和抗体の量は従来株に比べて大幅に減少した。3回接種すると抗体量は25倍に増え、予防効果が期待できるという。
ワクチンの効果については中和抗体に注目が集まるが、体内には本来備わる「自然免疫」と、感染やワクチン接種によって構築される「獲得免疫」がある。獲得免疫の中にも中和抗体のほか、ウイルスを殺す「キラーT細胞」など細胞性免疫もある。
順天堂大の玉谷卓也講師(免疫学)は「mRNAワクチンは抗体だけでなく、類似のウイルスにも対応できる『キラーT細胞』も誘導する。欧米と比べて日本人の新型コロナが流行しにくいのも、この免疫の活性が日本人では強いからという報告もある。抗体に関わる免疫より持続期間も長く、オミクロン株にも一定の効果を発揮する可能性がある」と指摘する。
玉谷氏は追加接種について「インフルエンザのように感染しても重症化しなければいいと考えるなら、やみくもに急ぐ必要はない。ただ、人にうつすリスクを考えれば、社会的責任からも機会があるなら接種すべきではないか」と強調した。
一方、ブルームバーグは、中国の科興控股生物技術(シノバック)製ワクチンの接種完了者25人にはオミクロン株を中和する抗体が十分に確認されなかったとする香港大の研究を伝えた。
東北大災害科学国際研究所の児玉栄一教授(災害感染症学)は「細胞性免疫による重症化予防の効果は10年程度持続するとの学説もあり、ファイザーやモデルナのワクチンを接種した人は、追加接種をしなくても重症化予防にはなるかもしれない。一方、中国製ワクチンなどに代表される不活化ワクチンは全体的に効果が落ちるとみられる」と解説する。
その上で児玉氏は、追加接種の意義をこう指摘した。
「抗体価の減少によって感染者が増えれば、その中から重症化する人が出てくることも避けられない。経済活動を止めないためにも今できる唯一の手段が追加接種だ」