児童相談所からの委託で里親として約5年半にわたって女児を養育してきた那覇市の50代の夫婦が29日、児童の特性を考慮しないまま一方的に児相への引き渡しを求められたとして、児相を設置する沖縄県を相手取って引き渡しの停止を求める行政訴訟を那覇地裁に起こした。女児には発達障害があり、夫婦は「急激な環境の変化で子供の心に悪影響が及ぶのは明らかだ。症状が落ち着くのを待ってほしい」と話している。
訴状などによると、女児は出生時に実の親が育てることができない状況だったため、2016年に生後約3カ月で県コザ児相(沖縄市)から夫婦に里親委託された。その後、県外で暮らす実母が生活が安定したことを理由に女児の養育を希望し、児相は21年になって里親の夫婦に対し、実の親がいることを女児に伝える「真実告知」と実母との面会を調整するよう求めた。
女児には多動や人見知りが強い傾向があり、21年4月以降、複数の病院で発達障害と診断された。医師からは「真実告知や実の親との面会は進めるべきではない」との意見があり、夫婦は児相と協議を続けてきた。だが、児相は21年12月、夫婦に22年1月5日に里親委託措置を解除することと、前日までに女児を引き渡して児相の一時保護下に置くことを通知した。
夫婦は28日に里親委託措置解除の差し止めを県に求める訴訟を起こしたが、那覇地裁(福渡裕貴裁判長)は「里親には一定の権限はあるが、法律上、保護されているとは言えず、訴える資格がない」として、即日、訴えを却下する判決を言い渡した。このため、夫婦は29日に引き渡しの停止を求める訴訟を新たに起こした。
夫婦の代理人弁護士は「里親や里子の権利は非常に弱く、児相の指示に対する法的手段はほぼないのが日本の実態だ。何が子供のためになるのか裁判所はよく考えてほしい」としている。夫婦によると、女児は夫婦を両親と信じているといい、「大人の都合で振り回し、子供の心を壊すようなやり方はあってはならない」と訴えている。
毎日新聞はコザ児相に電話したが、自動音声による応答のみでコメントを得られなかった。【遠藤孝康】