還付金詐欺、架空請求詐欺、オレオレ詐欺……と、詐欺師たちは私たちのお金を狙うためにさまざまな手口で牙をむいてきます。
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特殊詐欺の被害に遭わないために、警察も注意喚起に力を入れています。そのひとつに、詐欺防止のためのコールセンターを立ち上げる取り組みがあります。
過去に逮捕した詐欺グループの名簿に名前が載っていた人や、これから先、詐欺に狙われる危険性のある人に電話をかけて、詐欺の手口や防犯の方法を伝える取り組みを行っているのです。しかし、犯罪防止のためのこういった活動を逆手に取ったような詐欺も出ています(本稿は悪徳商法評論家・多田文明氏の寄稿 @tadabunmei)。
◆「騙されたふりをしてほしい」という依頼
2021年9月、80代女性Aさんのもとに防犯コールセンターなる組織から「もし、詐欺などの不審な電話があったら、連絡をしてください」という趣旨の電話が。いざというときのために連絡先が伝えられます。
そしてその数日後、Aさんのもとに「会社のお金を使いこんでしまった……」と、甥をかたった詐欺の電話がかかってきます。しかし、女性はすぐに甥の家族に確認。詐欺と気づきます。怪しいと思ったらまず第三者に確認を取る。ここまでは完璧な詐欺への対応です。そして、Aさんはこの件を防犯コールセンターに報告。
すると、防犯コールセンターから「あえて騙されたふりを続けてほしい」との返答が。曰く「警察は“騙されたふり作戦”によって、詐欺の受け子などの実行犯を逮捕している」と。
◆善意があだとなり多額の被害が
しばらくして、また甥をかたった人物から「お金が必要だ」との電話があります。そこで、捜査協力のつもりで、相手の指示通りに11月まで繰り返し宅配でお金を送ります。しかしこの防犯コールセンター自体が詐欺犯のなりすましでしたので、最終的に2500万円もの被害に遭うことになりました。
つまり、最初の連絡は詐欺グループのアポ電(詐欺の前触れ電話)といわれるものだったのです。Aさんは、騙されたふりをしたつもりが、逆に詐欺犯らに、騙される結果となってしまいました。
Aさんは、詐欺被害が増えていることへの憂いを強く感じていて、依頼された捜査協力にのってしまったのかもしれません。人の善意を逆手に取るような詐欺は本当に許すことができません。
◆アポ電の順序が逆のケースも
「だまされたふり作戦」の捜査協力を依頼して、お金をだましとる手口は、以前から起きています。
2019年11月、山梨県の80代女性Bさんは市役所職員をかたる人物から「不審な電話がかかってきたら、コールセンターに電話してほしい」と伝えられます。この電話がある少し前に孫をかたった人物から不審な電話があり、そのことを伝えると、先のAさんとケースと同じく“騙されたふり作戦”への捜査協力をお願いされます。
数日後に再び、孫を騙る人物から連絡があり、Bさんは捜査に協力するつもりでキャッシュカードを送ってしまいます。結果、2750万円ほどが引き出されてしまいまいした。
このようにアポ電の順序が逆のケースもあります。いずれにしても、警察で行っている本当の“騙されたふり作戦”では、実際のお金や本物のキャッシュカードを用意させることはありません。もし、現金などを用意するように話してきたら、詐欺と思ってください。
◆巻き込まれてしまわないために
ここ最近、今回紹介したようなマッチポンプな詐欺が多く起きています。知らず知らずのうちに巻き込まれてしまうと、被害金額が雪だるま式に大きくなる恐れがあります。ぜひとも、この記事を参考にご注意していただければと思います。
そして実家には、“騙されたふり作戦”のような巧妙な手口をご両親に周知してもらいましょう。見知らぬ電話番号からの着信は取らず、もし受話器を取ってしまったとしても、相手の話す番号には折り返さず「104」にかけるなど自分で調べた番号に電話をかけるようにお願いしてください。
<TEXT/悪徳商法評論家 多田文明>
詐欺・悪徳商法に詳しいジャーナリスト。これまでの勧誘先への潜入数は100か所以上。あらゆる詐欺・悪徳商法に精通している。多数のテレビ・ラジオに出演し、著書に『ついていったらこうなった』(彩図社)『だまされた!だましのプロの心理戦術を見抜く本』(方丈社) Twitter:@tadabunmei