2021年12月放送のNHK・BS1スペシャル「河瀬直美が見つめた東京五輪」に不確かな字幕があった問題で、NHKは12日開かれた経営委員会に、匿名が適正かなどを判断するチェックシートによる確認を怠っていたと報告した。経営委後、森下俊三委員長(関西情報センター会長)は報道陣に対し、担当者がこの番組はチェックシートの対象外だと思い込んでいたことを明らかにした。チェックシートは、「クローズアップ現代」のやらせ疑惑に対する再発防止策として15年に導入されていたが、生かされていなかった。
14年放送の「クロ現」では、知人男性を出家詐欺のブローカーとして匿名で出演させ、決定的なシーンが撮れたように演出していた。チェックシートは名前や顔を安易に伏せないようにするのを目的に、全てのニュースや番組を対象に導入され、「なぜ匿名にするか」「真実性をどう確認したか」などを取材者自身が書き込み、上司らが可否を判断することになっていた。
森下委員長は「マネジメントの仕組みはできているが、ついつい大丈夫だとはしょってしまうところで問題が起きる。(今回は)思い込みも含めてまずかった。日常の基本的にやるべきことをきちんとやってほしいと申し上げた」と苦言を呈した。
今回の番組は、映画監督の河瀬直美さんが東京オリンピックの公式記録映画を撮影する現場に密着したもの。問題のシーンは、河瀬さんの依頼を受けた映画監督の島田角栄さんの撮影風景で、「五輪反対デモに参加しているという男性」を顔にぼかしを入れて紹介した際、「お金をもらって動員されていると打ち明けた」と字幕を付けた。
NHKの9日の発表によると、担当者がカメラを止めて男性に補足取材し、これまで複数のデモに参加して現金を受け取ったことがある、五輪反対デモにも参加する意向がある、と説明したことを元に、字幕を付けた。その後、五輪反対デモに参加したかどうかは確認しなかったという。
発表を受けて河瀬さんは10日、「公式映画チームが取材をした事実と異なる内容が含まれていたことが、本当に残念でなりません」とのコメントを出している。【稲垣衆史】