新型コロナウイルスの変異株「オミクロン株」による感染が急拡大し、大阪府内でも独自指標「大阪モデル」で警戒を示す黄信号が8日に点灯した。2020年5月にコロナ専門病院となり、現在は一般患者も診ながらコロナ患者の治療を続ける大阪市立十三市民病院(同市淀川区)では、40人以上のオミクロン株患者(疑いを含む)を受け入れている。府内では4カ月ぶりに新規感染者が2000人を超え、感染爆発への不安が募る中、西口幸雄病院長に見通しを聞いた。
府内の病床全体の使用率は12日現在16・7%で、重症者は6人しかおらず、医療体制にはまだ余裕がある。同病院には13日朝までにゲノム解析でオミクロン株と確定した患者や、オミクロン株疑いの患者計44人が入院し、同日時点で20人が治療中だ。半数以上が30代以下で、1人が「中等症Ⅰ」(呼吸困難はあるが酸素吸入までは必要としない状態)の可能性があるが、他は軽症。ただ、30代以下でもワクチン未接種の場合は発熱などが長引くケースもあるという。西口病院長は「重症化予防にはワクチンが十分効いている。21年夏の第5波では入院時に肺炎の患者が多かったが、(現在の)第6波ではまだ見ていない。ウイルス自体が弱毒化しているのではないか」と分析する。
軽症・中等症患者用の治療薬の存在も大きい。デルタ株に対しては、抗体治療薬「ロナプリーブ」を使った抗体カクテル療法が効果を発揮した。オミクロン株では、抗体治療薬「ソトロビマブ」を高齢や基礎疾患のある重症化リスクの高い19人に投与し、うち10人には経口薬「モルヌピラビル」も併用して、19人全員の症状が改善しているという。全てが薬の効果かは明らかではないが、「使いやすい経口薬の利用が広がれば、インフルエンザと同じような対応が可能になるのではないか」と手応えを感じている。
第6波は春まで続く
しかし、危険な兆候も見えてきている。感染が広がるにつれ、リスクの高い高齢者の入院患者が増えてきたのだ。1月8~10日の3連休前は全て50代以下だったが、連休以降は60~90代の患者7人が相次いで入院。いずれも症状は軽いが、食事などに介助が必要な患者もいて、スタッフの負担が増えているという。
西口病院長は「第6波は感染拡大が始まったばかり。感染力の強いオミクロン株は学校などで感染が広がる可能性も高く、春ごろまで続くだろう。今後は高齢者などリスクの高い患者が増え、病床も余裕がなくなる可能性がある」と警戒。「高齢者への3回目のワクチン接種を早急に進め、リスクの高い患者に早く適切に治療を行い、感染者が増えても重症化を抑えることが重要だ」と呼びかけている。【近藤諭】